築地跡地 子どもたちを育む公園に 「浴恩園」保存求め学習会〈2024年11月10日号〉
- 2024/11/11
- 開発・環境
築地市場跡地(中央区)の地下で眠る江戸時代の大名庭園「浴恩園」を保存・再生し、子どもたちの生きる力を育む公園としてよみがえらせることを目的に、「築地浴恩園を公園にする市民の会」などは10月26日、中央区内で8回目の勉強会を開きました。
浴恩園は都指定の旧跡で、8代将軍・徳川吉宗の孫にあたり、老中首座の松平定信(1758-1829年)が、一橋家から譲り受けた約2万坪の屋敷地を整備した潮入りの庭園です。都の予備調査や試掘調査で、池の護岸の石積みなどが確認され、池泉回遊式庭園が奇跡的に残されている可能性が高まりましたが、都は「重要な遺構ではない」と結論。現在、5万人収容のスタジアムを中心に商業複合施設を建設する、大規模な再開発計画が進んでいます。
旧建設省土木研究所で研究員を務めた同会の共同代表・長屋静子氏は、小池百合子都知事が9月18日に公表した所信表明を紹介。「現代に息づく江戸の歴史・文化を新たにブランド化し、(中略)世界遺産に匹敵するような素材や隠れた歴史的魅力も掘り起こす」と示された部分に言及し、「私たちの考えと一致している」と指摘しました。
都は12月1日、都内在住・在学の小学生と、その保護者計100人を対象に、旧築地市場跡地の現場見学会を開催する予定です。これに対し、長屋氏は「我々は8月から都議会に現地視察を要望しているが、許可が下りない。公募での一般公開を実現したい」と、浴恩園の存在を広く市民に周知してもらう必要性を述べました。
身分は職分の相違
「高輪築堤の全面保存を求める会」共同代表の東海林次男氏が、JR品川駅周辺の再開発事業で2019年に発見された、日本初の鉄道遺構「高輪築堤」(港区)の現状などを説明。高輪築堤は確認された1.3㌔のうち、計120メートルのみ国史跡として保存され、約680メートルは解体。残る約500メートルの保存については、未計画です。
文化庁は高輪築堤の保存問題を契機に今年8月16日、「近世・近代の埋蔵文化財保護について(報告)」を公表。「(高輪築堤跡の)存在と重要性が認識されていたにもかかわらず、文化財としての保護措置が執られていなかった」と記されており、「現状では、保護されるべき遺跡があったとしても、適切な調査がなされないまま失われるおそれもある」として、「文化財の判断基準が不明瞭」「都道府県間における取り扱いの違い」といった課題とともに、新たな指針を示しています。
中央区ユネスコ協会の藤掛正史会長が、松平定信の功績を紹介。定信が残した教育、科学、文化の重要性について説明しました。
定宣は、経済思想家の石田梅岩(1685-1744年)が説いた石門心学の教えを実践。石門心学は、「倹約・正直・勤勉」を柱に、士農工商という身分は職分や職域の相違に過ぎず、男女の差もないという思想です。
定信の弟子たちも石門心学を普及させ、「これが現代の資本主義につながっている」と、藤掛氏は強調。祖父にあたる徳川吉宗の志を受け継いだ定信が、西洋天文学を取り入れた暦をつくったことなど、知られざる偉業を語りました。
東京民報2024年11月10日号より