【コラム砂時計】賃上げなし時短の愚 〈2025年3月9,16日号〉

 

 

  「バス運転士募集」「未経験者歓迎」─。こんな広告がポストに投函されていた。スーパーの特売や新築マンションの広告はよく目にするが、これは初めてだった。広告主は東京のKグループのバス会社で、大型2種免許の取得も自己負担なし、会社でサポートするとしている。

 この背景には、いわゆる「2024年問題」が横たわっている。同年4月から実施された「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」がそれで、トラック運転手の時間外労働時間が年間960時間に制限された。対象は長距離トラック、路線バス、観光バス、タクシー、その他流通業界全般のドライバーとなっている。

 先に紹介したバス会社の広告には「初年度モデル年収450万円以上」「毎年昇給」「賞与4か月分」とあるものの、他産業と比較して賃金水準が低い。路線バスのダイヤは通勤・通学に合わせ、早朝から深夜まで不規則な勤務時間もあり、「労働条件に対し、待遇が魅力的でなくなっている」と経営者団体の日本バス協会も認めている。

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