女性自衛官に対する自衛隊内での深刻なセクハラや人権侵害の被害が次々と明らかになるなか、軍隊への女性の参加と、男女平等との関係を憲法学の観点から考えようというシンポジウムが2日、衆院議員会館内で開かれました。自衛隊内のハラスメント被害を告発している当事者や家族、裁判に取り組む弁護士、支援する団体などが共同で開いたものです。
開会あいさつで弁護士の、武井由起子氏は、「(自衛隊内の性暴力を訴えた)五ノ井里奈さんの告発以来、防衛省による特別防衛観察などが行われてきたが、自衛隊内のハラスメント被害はまったく減っていない。防衛省に、ハラスメントを根絶しようとする姿勢や認識は見られない」と指摘。政府が自衛隊での「女性活躍」をアピールしていることにも触れ、「被害をなくすためにも、女性自衛官という存在をしっかり、考えてみたい」と、シンポジウムのねらいを語りました。
日本共産党、立憲民主党、社民党などから国会議員も、多く参加しました。日本共産党の吉良よし子参院議員は、「皆さんの自衛官へのアンケートで、どれほど深刻な被害が起きているのか、改めて実感した。自衛官のハラスメント被害を根絶するための行動に、心から敬意と連帯を表明したい」とあいさつしました。
自己決定に制約が
日本体育大学の助教の久保田茉莉氏が基調講演しました。久保田氏は、軍隊への女性参入の実態を、フランスを例に研究し、『軍隊への男女共同参画―女性の権利の実現と軍事化の諸相』(日本評論社)を2024年に出版しています。平塚らいてう賞奨励賞や、ジェンダー法学会の西尾学術奨励賞を授賞しています。

久保田氏はまず、軍隊への女性の参入が、自己決定権といえるのか、から話しました。
一見、自己決定と見える決断にも、特定の環境や社会的条件など、外的要因が影響しています。
久保田氏は、女性が兵士になる決断をすることにも、女性が男性に比べて社会的、経済的に低い地位に置かれていることや、政府が女性を軍隊に誘導する政策をとっていることなどが影響していることを指摘しました。
さらに、フランス憲法院が「人間の尊厳の擁護は、憲法的価値を有する原理」と判決していることを紹介。「自身の尊厳を傷つける行為は、自己決定とはいえず、自己決定権にも制約がある」と語りました。
こうした観点から、軍隊については、戦争を行い、他者を殺害するという組織の特殊性から、「命を賭す賭命義務や、特殊な人権制約など、非人間的な性格がある」として、軍隊への参加は「自己決定では説明できない、制約を持っている」と論じました。
また、女性が兵士になることを自己決定権とすることで「男性組織にあえて入る女性」と位置づけられ、組織に入った以上はセクハラにも耐えるなど、組織の論理に従わせ、被害を正当化するために使われる危険性があることを指摘しました。
二流の存在として
二つ目に久保田氏が論じたのが、軍隊への女性の参入の状況が、平等と言えるのか、です。











