核廃絶求めた運動の熱気 杉並区 郷土博物館が企画展 手作りのタスキや募金箱、署名板も〈2026年3月8日号〉

 1954年3月1日、アメリカによるビキニ環礁での水爆実験で第五福竜丸などの漁船が被ばくし、日本と世界に核兵器への恐怖と怒りを呼び起こしたビキニ事件から72年が過ぎました。事件を機に広がった「原水爆禁止署名」運動で、重要な役割を果たしたのが、全区民の7割から署名を集めた杉並区です。杉並区立郷土博物館の本館(同区大宮)、分館(同区天沼)の両館で、企画展「原水爆禁止署名運動への道」が4月19日まで開かれています。

杉の子会の人たちが署名集めに使ったタスキと、同会の旗=分館で展示

 ビキニ環礁での水爆実験と、第五福竜丸などの被ばくは、広島、長崎に続く「第三の被ばく」として、日本中に抗議を呼び起こしました。

 杉並区では、杉並区立公民館の館長だった、安井郁(かおる)を議長に、水爆禁止署名運動杉並協議会を5月9日に結成。水産物の購入控えで大きな被害を受けた魚屋、家族の日々の食事など生活を脅かされた女性たちなど、幅広い階層の人たちが立ち上がる運動となります。中心を担った安井は、原水爆禁止署名運動全国協議会(1954年8月結成)の事務局長を務め、後に原水爆禁止日本協議会(1955年9月発足)でも理事長に就くなど、運動が日本全国、世界に広がるうえで重要な役割を果たしました。

 今回の企画展では、本館で「杉並区立公民館と安井郁」として、安井の足跡と、運動が世界に広がる過程を紹介。分館では、「すぎなみの市民活動」として、区立公民館で社会科学の本を学んでいた女性たちの読書会「杉の子会」など、署名運動を担った市民たちの活動に注目した展示を行っています。

手書きの原稿も

 今回の企画展について、郷土博物館の学芸員の北村駿之介さんは、「安井家に残っていた関連資料の寄贈を受け、その整理が進んできたことや、戦後80年・広島長崎被爆80年の節目を迎えたこと、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が2024年にノーベル平和賞を受賞したことなどから、企画を準備してきた」と話します。

安井の自筆原稿や署名の資料。上の写真は公民館の館長室で署名簿を整理する女性たち=本館で展示

 郷土博物館では、これまでも杉並での水爆禁止署名運動の資料を常設展示するなどしてきたものの、安井の足跡に焦点を当てた企画は、これまであまりなかったといいます。安井家から寄贈を受けた資料のなかには、運動の過程や原水爆禁止世界大会の準備などで、安井が書いたスピーチやアピールの手書き原稿もあり、貴重な資料が初展示されています。

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