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シリーズ 外環道を問うA

どうなる地下水脈、大気汚染、行政の説明に不信

 関越道と東名高速道を地下トンネルで結ぶ外環道(外隔環状道路)の建設計画に対し、地下水脈の切断、大気汚染の心配、立ち退きや緑の破壊など住民にとって深刻な問題点が指摘されています。それらの心配にたいする行政の説明はおざなりで、計画だけは推進していこうという姿勢に住民の不満が高まっています。

善福寺池など枯渇の危険

 外環道は地下40b以下の大深度地下トンネル。トンネルの大きさは直径16bで5階建てのマンションとほぼ同じ高さです。それが16`bにわたって地下に通せば、地下水脈を断ち切ることになります。
 杉並区の善福寺池付近の地層のボーリング調査によると、水を通さない粘土層と水を通す砂礫(されき)層が交互に重なっています。地下水脈の厚みは7bから10bほどで、それが地下トンネルで行き場を失う危険があります。上流側にどんどん水がたまり、下流側に一部流れるものの、上流でよどんだような状態になると考えられています。
 善福寺2丁目に在住の元機械エンジニア・古川英夫さんは、善福寺池が枯渇する危険があると、独自に調査を進めてきました。
 古川さんによると、還八道路と西武新宿線が交差する井荻トンネルは、わずか1・2`bの工事で地下水がせき止められ、上流と下流で4bの水位差ができ、下流側で家があちこちで傾いたり、井戸枯れがどんどん起きました。その対策に「地下流動保全工法」が取られ、直径30aまたは20a、長さ33bのパイプ52本を用意して、トンネルの下をくぐらせ地下水を上流から下流へ流すようにしました。しかし古川さんは、地下水は砂礫層にありそこにパイプを突っ込むので「フイルターが目詰まりを起こし長持ちしない」と指摘します。
 4日に開かれた杉並地域PI課題検討会議で、国は、井荻トンネルの1998年までの地下水位のデータを示し、「パイプの効果は顕著」と説明しました。ところが同会議メンバーの古川さんは98年以降06年までのデータでは、問題になった当時と同じ4bの差が出ていることを示し、むしろパイプ効果のないことを指摘。都合の悪いものは隠すという当局の姿勢が浮き彫りになりました。
 杉並区長は、区の都市計画審議会の中でも、善福寺の保全に関する地下水脈への影響や「地下流動保全工法」への信頼性の疑問など「環境影響が不十分であるとした意見が多くの委員から出された」と述べ、「こうした課題に対し、国及び東京都はしっかり応えていくことが重要である」との要望書を昨年1月、提出しています。
 国の説明は、ほとんど進展がなく、地下水保全工法への疑問に対しても、「今後、地質及び地下水位等の詳細な調査を行い」他の工事例も参考に「具体的な工法を検討、実施」していくとしていました。
 古川さんは、「問題を指摘してから2年もたつのに重要な問題は、みんな今後にまわし、計画を推進していくのでは納得できない。今回の会議には失望した」と、不満を表明しました。

換気塔の排ガスが「心配」

 大気汚染測定運動東京連絡会長の藤田敏夫さんは、外環道の換気塔からの大気汚染による健康被害を心配しています。
 外環道は地下40―70bに建設されるトンネルです。トンネル内に地上から新鮮な空気を注入すると同時に、自動車の排ガスで汚れた空気を換気塔から地上へ放出することになります。換気塔が設置されるのは5カ所。東名道と外環道を結ぶジャンクション部(高さ30b)、中央道と結ぶジャンクション部(高さ15bの2カ所)、青梅街道インター(高さ20b)、大泉ジャンクション(高さ30b)に設置されます。
 藤田さんの調べによると、換気塔から排出される窒素酸化物の濃度はこれまでの測定結果(東京港海底トンネル)では、5―7ppm。環境基準の上限値は0・06ppmなので、基準の100倍という高濃度のガスが、1年中放出されっぱなしになっていることを示しています。
 環境影響評価書では、中央ジャンクションのある三鷹市北野3丁目で、二酸化窒素の年平均の予測値(2020年)が0・024ppm。バックグランド濃度(換気塔周辺の背景濃度)を含めた二酸化窒素の年平均値の予測濃度は0・023―0・037ppmとしています。これをもとに換算した日平均値は環境基準値の0・06ppmを下まわっているから「心配ない」といいます。
 藤田さんは、「この数値は大気汚染の予測を古典的な計算モデルを使用した結果で、信頼性が乏しい」と指摘します。このモデルはアメリカの平原に建てた換気塔で実験したデータをもとにしており、ビルやマンションの多い複雑な日本都市では、現在最も進んだ3次元流体モデルを使うべきだと主張。実際、中央環状新宿線沿道で予測した結果では、古典的なモデルによる予測を大きく上回る予測値が得られている、と強調しています。
 また「バックグランド濃度の予測には、都の窒素酸化物の行政上の目標値を使っており、科学的予測に用いるのは不適切」と批判。「実際に、事後調査報告書で予測が実況とかい離していた例が報告されている」と指摘しています。
 藤田さんは、三多摩の小学生の気管支ゼンソクのり患率が2001年以降上昇傾向にあることを心配しています。毎年約7000人の児童健診結果によると、例えば三鷹市の小学生の最近4年間のり患率は6―8%。自然有症率2・5%の3倍も高い数値です。

(「東京民報」2008年10月19日号掲載)
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