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都知事選 経済効率優先の転換を 広がった共闘の芽を運動に 宇都宮健児さんに聞く〈7月26日号より〉
- 2020/7/20
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都知事選(5日投票)は、元日弁連会長の宇都宮健児さんを幅広い市民と野党が支援し、画期的な共闘を広げました。候補者として選挙戦を駆け抜けた宇都宮さんに、インタビューしました。

―3度目の挑戦でした。今回の選挙戦を振り返って、どう感じますか。
今回は、いろいろな意味で異常な選挙でした。コロナ禍のもと、街頭演説や選対事務所も三密を避けて運営するなど、選挙活動が制約されました。
また、テレビ局による討論会が一度もありませんでした。一方、小池知事は、毎日、新型コロナ関連の会見がテレビで報道される。それ自体が選挙活動になっていました。
ただ、私が一人で出馬表明をした後、立憲民主党や日本共産党、社民党、新社会党、緑の党に支援をいただくことになりました。
選挙戦中は、国民民主党の平野博文幹事長や小沢一郎衆院議員など有志の応援をいただき、野田佳彦前首相や岡田克也前副総理も応援に駆けつけていただきました。出馬した過去2回より、支援のウイング(翼)が格段に広がりました。
衆院の都内25の小選挙区ごとに、地域選対がつくられ、市民運動と野党の国会議員、地方議員が参加してくれました。最初、選対と政党との調整がギクシャクしたところもありましたが、後半はスムーズになり、皆さんから「気持ちの良い選挙ができた」という感想を聞いています。
この共闘は、次の総選挙、来年の都議選にもつながっていくと思います。
わだかまりが消え
―選挙後、各政党にあいさつに回っておられますね。
各党とも国会議員や幹部が集まり、感謝の言葉をたくさんもらいました。
立憲民主党の幹部の方は、「宇都宮さん支援で各党と共闘すると決めた時、最初は地方議員からかなり反発があった」と率直に話されていました。

立憲民主党の地方議員は、首長の与党的な立場も多く、野党共闘での選挙の経験が少ないためです。しかし、「選挙中、共同行動を進める中で、わだかまりが消えていった。最後の段階では、選挙戦への異議が出なくなった。とても良かった」と話されていました。
自分としては、得票数や得票率で2014年を越えられなかったのを残念に思っていましたが、政党のみなさんに大変、感謝され、気恥ずかしい気がしましたが(笑)。
―コロナ禍のもとで、ネットでの選挙活動を重視されました。
選挙後に共産党を訪問した際、小池晃書記局長から渡された資料によると、選挙を通じたツイッター(短文投稿サイト)のフォロワー数(常時チェックの登録者数)の伸びが主要4候補で私が1位だそうです。
告示日につくった宇都宮けんじPV(プロモーションビデオ)が約50万回再生されるなど、ネットチームの取り組みが多くの人に届きました。
チームの反省会に出ると、若い人が多く、なかにはニューヨークに住む女性もいました。知事選も国際的な支援のもとでたたかう時代なんですね。
私自身、2014年の知事選後、ネットチームからツイッターの発信用にiPad(アップル社の製品)を渡されました。最初は平仮名しか打てなかったのが、徐々に使い方を覚え、今回は、最初の出馬表明をツイッターで行いました。2014年以前の自分を思うと革命的な変化です(笑)。
“自己責任”の社会 あり方が問われる
―政策論議については。
今回の選挙は都民の生存権がかかった選挙だと訴え、①新型コロナウイルス感染症から都民の命を守る医療体制の充実と自粛・休業要請等に対する補償の徹底②都立・公社病院の独立行政法人化を中止するとともに、これまで以上に充実強化③カジノ誘致計画は中止―の3つの緊急政策などの公約を掲げました。

こうした問題を争点化でき、都政の問題点が都民にも浸透した点は良かったと思います。
都立病院独法化について、立憲民主党は、もともと反対していなかったんですね。それが、選挙戦をたたかうなかで反対を掲げました。
コロナ禍によって、公的な医療機関の大切さや、少人数学級の意義、住民が反対する道路建設をやめてコロナ対策に振り分けることなど、さまざまな政策課題の必要性が、都民にとってわかりやすくなった選挙だったと思います。
ただ、小池都政の4年間が、もっと総括されるべきでした。小池知事が「巣ごもり」状態で論戦を回避し、4年前の都知事選での公約がどれだけ実現しているか、築地や五輪の政策がどうなったのかなど、問われるべきことが問われない選挙になったのは残念です。
いずれ医療崩壊に
―小池都政のコロナ対策をどうみていますか。
大きな問題があると言わざるを得ません。
都知事選の期間中も指摘しましたが、オリンピックの延期が決まる以前から、都民からの相談件数が急激に伸びていたのに、PCR検査数が伸びるのは五輪延期決定後です。
東京アラートも、都知事選出馬前日に解除しましたが、解除後の方が、新規感染者が伸びています。小池知事はパフォーマンスはするものの、具体的な行動がありません。
このままではいずれ、重症者が増えていき、医療崩壊を招きかねない危険があります。
―都知事選では、社会のあり方を問う声も広がりました。
自粛・休業要請のもと、多くの都民の命や生活が脅かされています。
経済効率優先、自己責任の社会では、コロナ禍のような災害が起きると、あっという間に、仕事を失ったり、住まいを失ったり、何十年も続いた営業ができなくなってしまう。そういう社会のあり方が問われています。
経済効率性重視のもと、都も保健所を71カ所から31カ所に減らしてきました。都立・公社病院の独法化も中止しようとしていません。こういう都政のあり方、社会のあり方を問う声が都知事選で広がりました。
選挙は運動です。選挙のなかで出てきた芽を伸ばし、さらに大きな運動をつくりあげていくことが大切です。私も皆さんと頑張っていきます。
(東京民報2020年7月26日号より)