空飛ぶ誇り、取り戻したい JAL不当解雇から10年〈2020年10月25日号より〉

 JALが会社更生法を申請した後、第1次の早期退職者募集ではグループ全体で従業員の1割に当たる4000人が応募。予想を超えた数で、運行に支障が生じる可能性も報道されました。しかし、JALは9月に整理解雇の方針を打ち出しました。

 一部報道では「JALの破綻は労働組合の過剰ともいえる要求により人件費などがかさんだ結果」といわれています。実際は国の航空政策により、米国との貿易不均等是正のために必要ないジャンボジェット機(1機200億円)を113機も買わされたり、97カ所の空港乱造での赤字路線拡大の他、①ホテル・リゾート事業による損失1300億円②ドルの先物買いによる損失2200億円③燃油の先物取引による損失1900億円―などの経営判断ミスによるものが大きいのが実態です。

モノ言う労働者を排除

 解雇の人選基準は①2010年8月31日時点の休職者②過去の一定期間内に一定日数以上の病欠・休職者③年齢の高い者(パイロットでは55歳以上の機長、43歳以上の副操縦士、53歳以上の客室乗務員)―でした。

 JALは2010年9月末から整理解雇の対象者をフライトから除外。自宅待機となった当事者らは一様に「フライトスケジュールが入らなくて苦しかった」と語ります。10月には労組事務所より遠方の成田空港近くの独身寮の一室で、管理職による退職勧奨の面接が始まりました。労組は近くのファミリーレストランに朝から夕方まで待機し、対象者を激励支援しました。

 管理職による直接面接が2回の他、会社からの文書が発送されると、到着に合わせて電話での追求などが行われ、原告団は「泣く泣く退職に応じた仲間もいました」と言います。

 またベテラン乗務員、客室乗務員らは空の安全確保の観点から、職場環境の改善などを訴えてきました。利益を最優先に安全確保を軽視するJAL経営陣が、モノを言う労働者の昇格差別だけでは足らず、排除したとの見方も否定できません。

原告らの思いは

 客室乗務員原告の一人は「誇りを持って、一生の仕事として働いてきました。自立し経済的に、男性と変わらず一家の大黒柱として支えていた人が大半です。解雇は女性を年齢で差別するセクハラです」と訴えます。

 別の客室乗務員は「子育てや親の介護もありましたが、泊まりもある不規則な仕事をこなしてきました」と切り出しました。「育児休暇明けに国内線でという条件で復帰したのに、腰痛を押して国際線にも乗務してきました。定年まで勤めたいとの思いが踏みにじられて悔しい」と原告に名を連ねています。

 機長として乗務していた原告は、「先輩のラストフライトは大勢が駆けつけて、花に囲まれていた。私のそういう機会は奪われた」と話します。

 パイロット、客室乗務員両原告ともに「最後のフライトは自身の人生を振り返り、感謝の思いで飛ぶんです。けじめの意味ですがそれもできなかった」と無念をにじませます。

JAL本社前でのスタンディング=9月15日

 病休を理由に解雇された客室乗務員の原告は「基準内の欠勤でした。健康を取り戻して復帰との思いでしたが、“病気した自分が悪い”と自分を責めてしまいます」と話します。

 他にも半年に一度の航空身体検査において、1度だけ不整脈で不合格だったために解雇になった機長もいました。

 JALは破たん以降の10年間で、パイロットが同業他社に300人以上流出。客室乗務員の現場でも「ベテランが手薄で経験や技術の継承が難しい」と言われています。一方でパイロットの訓練生386人、客室乗務員を6205人採用しています。

 新型コロナの影響で航空需要が落ち込む中、JALは「雇用は守る」と言いますが、10年前の解雇争議の未解決は現在、現職をも不安にしています。被解雇者も空に戻る機会は年を追うごとに減っていきます。解決は待ったなしです。

(東京民報2020年10月25日号より)

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