〈一分 11月1日号〉菅義偉首相が10月26日、就任後初の所信表明を行いました。政権発足から40日たって、ようやくの演説は、…
- 2020/10/27
- オピニオン連載
菅義偉首相が10月26日、就任後初の所信表明を行いました。政権発足から40日たって、ようやくの演説は、ここ20年間の政権では鳩山政権に並び、最も遅いといいます。前政権から人事も政策も骨格を引き継いだ内閣としては異例のことでしょう▼所信表明は、故事や偉人の言葉、あるいは政権のスローガンを盛り込んで、目指す国家のビジョンを語るのが定番ですが、菅氏の演説にそうした国家像への言及はほとんどありません。「実務優先」と持ち上げる論調もありますが、首相自身に「語るべき理念」がないのが実態でしょう▼語る理念がないことに加え、「語るべき事実」に触れようとしない姿勢も目立ちました。日本学術会議の任命拒否問題には、演説で一言も触れませんでした。任命拒否は、学問の自由、思想・良心の自由に関わる、日本の戦後史の転機になりかねない重大な問題です▼所信表明では、コロナ対策の鍵となるPCR検査拡大は、数字を述べたのみ。モリ・カケ・サクラなど、自身も官房長官としてかかわった前政権からの国政私物化の疑惑にも触れませんでした▼「自助」の名の自己責任押しつけなど、冷たい強権政治がくっきりあらわれた菅政権のスタート。野党と市民による政権交代こそ、進むべき道です。
〈2020年11月1日号より〉