罰則より検査への支援こそ 都ファ コロナ条例改正案の問題点 久保木太一弁護士に聞く〈12月13日号より〉

 都議会最大会派で小池都政の与党、都民ファーストの会(都ファ)は2日、開会中の都議会定例会への「新型コロナウイルス感染症対策条例改正案」の提出を断念することを表明しました。正当な理由なくPCR検査を拒否した場合、5万円以下の過料を科すもので、都ファは検査に実効性を持たせるためと強調しますが、「感染拡大防止には逆効果だ」との批判を浴びていました。引き続き、罰則を残したまま来年2月の都議会に提出を目指すとしています。久保木太一弁護士に、同条例案の何が問題かについて聞きました。

都ファが提出予定だった条例改正案について語る久保木弁護士

2月提出ねらい

 条例改正案には問題のある条文が多く、欠陥だらけの条例案だと言えます。

 都民ファーストの会は条例改正案に先立つ9月に、就業制限や外出自粛要請がされている感染者等が他者に感染させた場合や、事業者が休業や時短営業の要請に従わずに一定数以上の感染者を出した場合にも、行政罰を科す条例案を公表していました。しかし、他の会派やメディアなどから強い批判が出されました。新宿区長は感染者を「犯罪者扱いする」ものだと批判しました。これを受けて都民ファーストの会は、提出を見送りました。

差別助長の危険性

 今回、提出を予定していた条例改正案は、行政罰の対象を検査拒否の場合に絞ってはいるものの、事業者名などの公表の規定(第6条第2項)や、感染防止に「努めていない」事業者に対して財政上の支援を行わないことができるとする規定(第13条第4項)など、恣意的に事業者を「排除」し、差別を助長しかねない規定が多く含まれています。

 また、濃厚接触者などの検査拒否に罰則を付けることで、感染者が濃厚接触者について答えにくくなるなど、かえって感染者を特定することが阻害されることが危惧されます。

安心できる支援

 感染拡大防止のために今必要なのは、検査を受けたい人が受けられる体制の整備であり、そのための実効性ある保健所、医療機関などの体制強化、支援であり、都民や事業主に対する様々な経済的支援です。

 PCR検査を受けたくない人は、その人なりの理由があります。その多くは収入が絶たれてしまうことや、勤務先に多大な迷惑をかけてしまうことへの心配があるのではないでしょうか。また陽性だと分かると、職場や学校で差別を受けるかもしれないという不安もあると思います。

 もし陽性と判明して医療機関や療養施設に入院、保護・隔離されても、休業補償など経済的な支援があれば安心です。また家族に介護や保育が必要な人がいた場合には、一時的に預かってくれる施設や人の支援体制をつくることも重要です。

制裁の根拠弱く

 条例改正案ではまた、事業者名が公表され得る場合の例示として「ガイドライン」を遵守していない場合が規定されています。その場合、財政上の支援が行われないという制裁が定められています。この「ガイドライン」は、「都、国、特別区、市町村及び事業者が加入している団体等が定めた新型コロナウイルス感染症のまん延の防止のための指針」(第8条第1項)とされています。

 しかし国、自治体が定めたものであっても、絶対的ではなく、まして信頼性の低い「団体等が定めた」ガイドラインも含まれるにいたっては、制裁を科す根拠としてはあまりにも薄弱です。

 さらに「ガイドライン」を遵守できなかったり、時短営業ができなかったりする事業者の中には、固定費などの負担によって経済的にひっ迫し、通常営業をせざるを得ない事業者が少なくないはずです。それにもかかわらず財政上の支援を拒絶するのは、そのような事業者に回復不可能な打撃を与えかねません。

恣意的運用生む

 条例改正案で罰則の対象になるのは、検査命令を「正当な理由」なく拒否した場合ですが、どのような場合に「正当な理由」に該当するのかについては明らかになっていません。他にも「努めていない」など、曖昧で主観的な表現が多く、恣意的に使われる恐れがあります。そもそも「努力義務」違反に罰則を科すこと自体、矛盾しています。

 また条例改正案は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)が罰則を定めていない検査拒否について、知事による検査命令を前提に罰則を定めるものです。法律にもない罰則で検査を強制することは、原則として任意で受けてもらうという感染症法の趣旨にも反します。

 さらに言えば、PCR検査の強制は感染症法で可能ですし、時短や休業の命令に従わない事業者名の公表やガイドラインの遵守を求めることは条例を改正しなくても、賛否は別として、すでに現行法や都条例に基づいて行われており、条例を改正する必要性はないとも考えられます。

(東京民報2020年12月13日号より)

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