新型コロナ 感染抑止のカギ 無症状者を発見、保護

 新型コロナウイルスの感染急拡大で、入院や療養先が決まらず「調整中」の人が急増し、都では自宅療養の人を合わせると約1万5000人に上っています。医療にかかれず自宅で亡くなる人も相次いでいます。開会中の国会論戦では感染拡大を抑止し、国民の安全、安心をいかに守るのかが焦点です。日本共産党の志位和夫委員長が1月21日の衆院本会議で提案した、「社会的検査」の戦略的実行も、その一つ。都内の状況を見ました。

 「症状の出た人をいくら追いかけても、氷山のうち水面から上に出ている部分を見ていることにしかならない」。東京大学先端科学技術センターの児玉龍彦名誉教授は、新宿区内で開かれた学習会(昨年12月)で、社会的検査の意義をこう強調しました。

 実際、重症化しやすい高齢者の施設などでクラスター(感染者集団)が発生する要因に、無症状の職員や利用者からの感染が指摘されています。児玉氏の提唱を受けて大規模検査に取り組む世田谷区では、クラスター抑制に成果が認められています(江口じゅん子区議のインタビュー参照)。都内では他に、墨田、江戸川、千代田などの各区に広がっています。

 しかし政府は「検査の拡大は医療崩壊につながる」との理由で、医者が必要と認めた人か、保健所が濃厚接触者と認めた人しか検査対象と認めず、対策の中心はもっぱら国民への「自粛」要請。検査体制拡充は今も二の次三の次です。

国・都の支援こそ

 各自治体が社会的検査に取り組もうとしても、多額の財源が必要で、財源の2分の1は自治体もちという、国の冷たい財政支援がネックとなっていて、特別区長会なども、財政支援を求めています。

 東京都の姿勢も同様で、共産党都議団が繰り返し検査の拡充を求める中、検査能力は1日6万8000件まで引き上げましたが、実際の検査数は1万件ほどにとどまっています。

 児玉氏は先の学習会で「街の中の無症状者を検査で見つけ、減らすのが、対策の主戦場」とも訴えています。ノーベル賞受賞者の本庶佑氏は出演したテレビ番組で、「業界支援という形で何兆円もばらまいているが、検査にお金を使うほうが断然コスト的にも社会的にも有効」と指摘しています。

 検査は「いつでも、どこでも、何度でも無料で」が当たり前になることが、国民の安心・安全への近道であり、国も都も対策の根本的転換が求められています。

社会的検査でPCR抜本拡充 全国に先駆けた世田谷区

江口じゅん子区議

共産党区議団 江口じゅん子幹事長に聞く

 いつでも・どこでも・何度でもー。世田谷区の保坂展人区長が2020年7月、新型コロナ感染症対策として提唱した、PCR検査を抜本的に拡充する「世田谷モデル」。国が検査対象を絞る中で、それ以外の人も対象とする「社会的検査」は、様々な議論を呼びました。社会的検査の効果や導入までの経過、共産党区議団(3人)の役割などについて、江口じゅん子幹事長に聞きました。

施設の感染抑止へ

 世田谷区の社会的検査の目的は、「施設利用者への感染を未然に防ぎ、重症者を避ける」「感染者または感染疑いのある人に接触した可能性がある人に対して、早期に対応する」「施設内でのクラスター(感染者集団)を抑止する」です。

 従来、保健所や医療機関、医師会などが保険診療として行ってきた感染疑いの人や濃厚接触者へのPCR検査に加え、昨年10月1日から、それ以外の人たちを対象にした定期検査と感染者が見つかった時などに行う随時検査、今年1月13日からは都補助を活用して訪問・通所事業者の職員のスクリーニング検査(2週間に1回)も始めています。いずれも希望する施設が対象です。

 検査対象は先行実施した介護・障害者施設職員に加え、一時保護所・児童養護施設等・保育園・幼稚園の職員と感染者が発生した際の施設利用者(特養老人ホーム、一時保護所・児童養護施設等の入所予定者、通所サービスの利用者と同居家族を含む)、小・中学校・学童クラブの教員・職員へと広げてきています。

 社会的検査は保健所への負荷をかけないよう、11月からは検査受付から実施・結果返送、陽性者の行動追跡までを民間企業へ業務委託(約3億3800万円)し、実施しています。従来の保健所やかかりつけ医経由での検査は、医師会などの協力を得て、一日最大600件程度に拡充し、結果判明までの時間も短縮化しています。

 それでも感染者の急増に伴い保健所の業務はひっ迫しており、体制強化が急務です。1月8日には、保健所の体制を緊急に強めるよう改めて区長に要請しました。

クラスター出さず

 社会的検査は、これまで303施設が実施し、約7500件を検査した結果、17施設で68人の陽性者を確認しました(表参照)。特徴は定期検査で把握された陽性者が、全て無症状だったことです。無症状の陽性者が発生した施設内では、濃厚接触者の発生した事例はありませんでした。ある特養老人ホームでは職員・入所者などの無症状陽性者を15人も見つけ出しましたが、クラスターの発生はなかったのです。

 区ではこの結果について「重症化リスクの高い、高齢者や基礎疾患を有する方の陽性者を無症状の段階で早期に発見し、入院措置することで、仮に有症状になった場合でも迅速な対応が可能になる」と分析しています。命を守る上で有効な対策であることが明らかになりました。

区長「タイムリー」

 共産党区議団はPCR検査拡大の実現は、地域や施設の感染対策を左右する重要課題と捉え、実現のカギである国費を引き出すため、国会議員団と連携し奮闘しました。

 一方、議会で多数を占める自民、公明両党などは、区長が進める社会的検査を「議会や庁内の議論を無視した区長のパフォーマンス」などと批判。庁内からも「保健所の体制強化なくして実現は不可能」などの厳しい意見が寄せられました。

 共産党区議団として重視してきたことは、地域の人たちや、商工業、介護、保育、学校、障害、医療などの関係者・団体から聞き取りを重ね、実態を把握し、それをもとに区へただちに申し入れを行ってきたことです。

 感染者急増の昨年7月の都知事選終了後には①1日1000件の検査拡充②科学的知見のもとでの対策が必要であり「世田谷版専門家会議設置」を申し入れました。保坂区長は「タイムリーな内容でありがたい」と応じ、かみ合う議論となりました。その後、区は、対策本部会議に東大先端研の児玉龍彦教授らをメンバーとする「有識者との意見交換の場」を設置。ここでの議論がPCR検査「世田谷モデル」提唱へとつながりました。

世田谷区の社会的検査 命守る区政、与党として

検査や保健所体制の拡充を保坂区長(左から2人目)に要請する里吉都議(右隣)と共産党区議団

 社会的検査を実現するためには、国からの財政支援が不可欠です。昨年8月に小池晃参院議員、宮本徹衆院議員らと保坂区長との会談が実現。共産党国会議員団は閉会中審査で「世田谷区の社会的検査を国費として認めよ」と質疑を行い、8月下旬には政府交渉を行いました。

 同時期、区も国へ要請し、国は区の介護・障害者施設職員などを対象とした「社会的検査」を「行政検査」と認め、今年度、実質的には全額国費対応が実現しました。また、これまで認めてこなかった何人分かの検体をまとめて効率よく検査する「プール方式」も、認める方向です。

 国は国会論戦や世論に押され、11月には感染流行施設地域などの医療機関・高齢者施設の一斉かつ定期検査を促す通知を発出。積極的PCR検査拡充へ、やっとですが方向性を変えてきました。しかし行政検査費用の2分の1は自治体負担という基本的な仕組みに固執しています。これが全国の自治体で、積極的PCR検査をためらう要因となっています。

国の責任果たせ

 PCR検査の一層の拡充や区民の暮らし、営業を守るために、自治体としての努力を最大限追求することは当然ですが、一自治体だけでは限界があります。PCR検査を全額国負担で行うことはもちろん、コロナ対策に使える地方創生臨時交付金の増額、医療機関への支援など、「自治体まかせ」ではなく国の思い切った予算措置で、国の責任を果たさせることが必要です。東京都の支援も、まだまだ不十分です。

 コロナ禍から区民の命と暮らしを守るために、区政与党として、少数与党の困難はありますが、全力で頑張ります。

【東京民報2021年1月31日号より】

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