東京外環道 地盤補修で住宅立ち退き 「聞いてない」住民が抗議〈2021年4月11日号〉

 東名高速道路と関越自動車道を大深度地下で結ぶ東京外かく環状道路(東京外環道)の工事で地表陥没や、地下空洞が連続して3カ所発見された問題で、沿線地域で住民説明会が2日より開かれています。地域住民でつくる外環被害住民連絡会・調布(連絡会・調布)は3日、記者会見を開き、説明会などの場でNEXCO東日本(高速道路会社)が地盤補修の際に生じるとした〝仮移転〟が、「住民の意向を無視して公表された」と厳しく抗議しました。

市立第四中学校前で住民説明会後、会見を行う連絡会・調布のメンバーら=2021年4月3日、調布市

 会見で連絡会・調布は原状回復を求め、事前調査の不足と、並行してもう1本のトンネルを掘り進めることに反対を表明。「セメントや化学溶剤を用いた地盤改良はまっぴら」とし、「私たちの土地の将来を決めるのは私たち。平穏な暮らしを奪い、さらに地盤を補修するから『住民は立ち退け』などという事業者の勝手な論理は許されません」との声明を発表しました。

 地盤補修にともなう「仮移転」は、3月19日に行われた東京外環トンネル施工等検討委員会有識者会議(有識者会議)後の記者会見で、トンネル直上の一部分で生じると初めて言及されました。NEXCO東日本は当該住民に対し個別に訪問し、仮移転について「建物を除却し更地にした上で、地盤改良を行う。その後、戻ってもらう」との内容を説明。その際、「補償費用については(説明を)別の者が行う」と告げたと言います。

 住民は「土地収用法に基づかない仮移転で、(補償が)どうなるのかわからない。団体交渉が認められず、個別での対応では判断しかねる」と不安を隠せません。連絡会・調布の滝上広水・共同代表も「極めて無責任な対応」と憤ります。連絡会・調布は調布市も含めた説明会の実施を要求しています。

環境悪化に懸念

 一方で、地盤改良工事にセメント(PH12~13の強アルカリ性)を注入することで地盤がアルカリ性になることが懸念されています。アルカリ性地盤では植物の生育に影響があるといいます。地域は地下水が豊富で河川にも隣接しており、雨水とともに地下に浸透した水の影響に対する心配の声も聞かれます。

 東京外環道は事業が環境に与える影響を予測・評価し、内容について住民や関係自治体などの意見を聴き、専門的立場からその内容を審査する「環境影響評価」が、地上に影響のある大泉・中央両ジャンクション付近しか行われていません。

日本共産党の原田あきら都議は「東京外環道の施工で地盤補修を行うのならば環境などに影響を与える可能性があり、国は環境影響評価調査をやり直すべきです」と指摘しています。

 「事故や補償内容について事業者内の検証にとどまり、第三者の視点での検証が全くされないままでは責任の所在がはっきりしない」と、住民は指摘しています。説明会で言葉だけの謝罪しかない国やNEXCO東日本・中日本は安全・安心をないがしろにし、被害の過小判断をする工事推進ありきの姿勢を即刻改めるべきとの声が広がっています。

東京民報2021年4月11日号より

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