【国会議員コラム】山添拓*未来を拓く トリチウムは親しむべき存在ではない〈2021年4月25日号〉
- 2021/4/25
- コラム・オピニオン

菅政権が13日、福島第一原発汚染水の海洋放出を決めました。「関係者の理解なくいかなる処分も行わない」としていた約束を破る強行姿勢に怒りが広がっています。
同じ日、復興庁がホームページで公開した動画に目を疑いました。放射性物質であるトリチウムがかわいらしいキャラクターにされ、健康への影響はない、世界の原発からも排出されているなど安全性を強調するもの。しかし、例えば飲料水のトリチウム濃度の基準は、WHO(世界保健機関)は1リットル当たり1万ベクレル、アメリカは740ベクレル、EUは100ベクレルなど様々。健康に及ぼす影響は知見が確立していません。一般的な原発の排水と、トリチウム以外にも放射性物質が含まれる事故原発の排水を同じように論じるのも乱暴すぎます。
翌日の国会で取り上げました。この動画を含む広報の発注先は電通。費用は全体で3億円を超えるといいます。事故から10年、漁業は本格操業にこぎつけたばかり。復興への希望を見いだそうと懸命に取り組んできた人々を、あまりにも軽んじるものではないか。
この日の質問では、汚染水処理の切り札とされるALPSという装置が、原子力規制委員会の「使用前検査」を経ていないことも判明。海洋放出は前提を欠きます。
中国、韓国、ロシアなど各国も重大な懸念を表明。私も韓国や香港のメディアから取材を受けました。
復興庁は14日、デザインを修正するとしてチラシや動画の公開を休止。海洋放出は撤回し、他の選択肢を追求すべきです。(弁護士、参院議員・東京選挙区選出)
東京民報2021年4月25日号より










