読書 今月の本棚と話題*『時代を撃つ ノンフィクション100』 佐高信 著〈2021年5月23日号〉

「時代の良心」の作品群

岩波新書 2021年
820円+税
さたか・まこと 1945年山形県生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。評論家。著書多数

 歯に衣着せないことで知られる佐高氏の選りすぐりのノンフィクション作品集です。佐高氏は、財界人であろうと政治家であろうと、ためらわず対象者を実名で批判を続けてきた激辛の評論家・著述者です。そのため、「返り血」を浴びることも少なくなく、最近はテレビへの出演もグッと少なくなっています。その視点はローアングル・庶民目線で、舌鋒鋭く時代をえぐっています。

 まず、「現代に向き合うー格差社会ー」、貧困の中で教育も受けずに育ち殺人を犯した永山則夫の著作「無知の涙」をはじめ、現在活躍中の活動家雨宮処凛の「生き地獄天国」等貧困のもたらす現状と格闘する人々を紹介したドキュメント7編を取り上げています。

 次に、「経済の深層」として、経済界・官界を告発したノンフィクションを集めています。中には「異色官僚」として有名で、城山三郎氏が小説「官僚たちの夏」で描いた通産官僚の佐橋滋氏の著作も取り上げています。また、宗教関係ではオウム真理教の麻原彰晃や創価学会の池田大作に迫る作品も紹介します。

 Ⅱは、メディアへの問いかけです。権力批判をせずにおとなしくなった日本のメディアをうがつ様々な評論が存在していることを知らせてくれます。Ⅲ歴史を掘り下げる―戦争を考える―では、戦時中・戦後にもさまざまな誠実で鋭い論稿があったことを教えてくれます。先の戦争に関するユニークな視点による諸論稿を紹介しています。

 “正史”には書かれていない歴史の裏面史やエピソードが集められています。なかでも、吉武輝子による「別れのブルース」にある戦時中の淡谷のり子の軍人相手のタンカが小気味よい。

 これらのノンフィクションは、それぞれの「時代の良心」ともいえる作品群であり、我々が生きていた時代がどうであったのかを照らす大切な記録と言えます。新書版で小型でもあります。場所も取らないので、ぜひ各自の書架に一冊おいて折に触れ紹介されたノンフィクション作品をひも解きたいものです。(松原定雄・フリーライター)

 

東京民報2021年5月23日号より

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