「五輪の夢を実現するために、誰もがいくらかの犠牲を払わなければならない」―国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の発言です。新型コロナ感染症の広がりのなかでも、あくまで東京五輪を開催しようという姿勢に内外から批判が起こっています▼東京五輪をめぐってはIOCのコーツ副会長が、緊急事態宣言下での五輪開催を「完全にイエス」と発言したばかり。深刻な医療崩壊が起きかねない状況で五輪を強行すれば、多くの命の犠牲を生むことになると、専門家から心配の声があがります。さらに、世界各国のメディアでは、東京五輪が、世界的なコロナ感染の爆発的拡大の引き金になりかねないという懸念も広がっています▼多くの国民の五輪中止を求める声にも関わらず、日本政府や東京都は、一連のIOC幹部の発言への抗議すらしていません。それどころか、菅政権の内閣官房参与だった高橋洋一氏が日本のコロナ感染を「さざ波。これで五輪中止とか笑笑」と発信し、批判の高まりのなかで辞任に追い込まれました▼五輪憲章が掲げる理念は、「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進」です。関係者があくまでも五輪開催に固執し続けるなら、「犠牲」になるのはこの理念そのものも、でしょう。
東京民報2021年5月30日より







