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- 日常の安全が非日常の安全 マンションの防災、備えは〈2021年5月30日号〉
今年は全国的に梅雨入りが早く、梅雨入りから秋にかけて例年発生するゲリラ豪雨での被害が心配されます。マンションなど集合住宅は災害に強いと思われていますが、超高層マンションでの豪雨による電源喪失で日常生活が営めなくなったなどに見られるように、新たな視点での災害対策も喫緊の課題です。また首都圏直下型地震が「いつ起きてもおかしくない」といわれる中、日頃の防災・減災への備えは欠かすことのできない問題です。住まいとまちづくりコープ(まちづくりコープ)が主催する「マンション防災講座~東日本大震災10年、熊本地震から5年マンションの防災を考える」には多くの関心が寄せられました。
まちづくりコープが講座

まちづくりコープは阪神淡路大震災、新潟中越地震や東日本大震災、福岡豪雨などの被災地に足を運び、調査と被災者支援に取り組んできました。こうした蓄積を本にして出版し注目を集めています。また、出前講座の形で住まいとまちづくり講座を継続して開催。第127回目となる今回の「マンション防災講座」は4月23日にオンラインで行われました。
前半をマンション全体の問題や対応について、防災士やマンション管理士の資格を持つまちづくりコープの千代崎一夫代表が講義。後半は人の身を守るための備えなどについて、同コープの防災士や福祉住環境コーディネーターの資格を持つ山下千佳氏が説明しました。
千代崎代表は今年2月に「住みよい板橋をつくる区民と勤労者のつどい」で行った「東日本大震災10年のメモリアル集会」を振り返り、「被災地の宮城県からの報告では復旧がまだなところもあり、復興といっても多くの人々のためのものではなく、大企業にお金が使われている」と口火を切りました。
さらに災害対策には「噴火、竜巻、火事、台風を付け加えなくてはいけない」とし、「“減災・防災”を中心に事前防災や安心を考えられる“安全管理”という意識が大切。災害発生時には“危機管理”としての対応が必要」だということを強調しました。
重ねてマンションでの「防災計画」は総合的、具体的なことを考えて作成するとし、「防災マニュアル」は予定していたメンバーが(帰宅困難などで)集まらないなど、多少条件が悪くても進められる手引きとして、複合災害に対応できることが大切だとしました。
続いて防災力アップにむけて具体的な段階を示して説明。水害について、ハザードマップの確認(自治体のホームページなどで)が最初にすることだとしました。また災害時に表面化する課題は▽認知症▽バリアフリー▽多国語対応▽ペット同行避難―と指摘して日頃の備えを促す他、マンションとしての震災後の流れ(図1)と、地震から1週間に行う対応(図2)などについて事前に配布した資料を提示。参加者が自身のマンションが置かれた状況をチェックしながら、改善できるように丁寧に確認しながら語りました。

自宅避難に必要なこと

続いて山下氏が「日常の安全が非日常の安全に」として、家具の配置などについても詳しく語りました。「建物に激しい損傷がないのなら、自宅で過ごすことが好ましい」として、“自宅避難ができるように備える”必要性を説き▽水の備え▽トイレの備え▽食料・燃料の備え▽停電への備えなど―について説明。日頃の備えと注意点を詳しく語りました(図3)。集合住宅では「排水漏れの確認が終わるまでは、トイレを使えない(風呂などに貯めておいた水をトイレの水洗には使えない)」ということに驚く参加者もいました。
また地震の時の行動を身の安全の確保と、揺れが収まった後の行動に分けて提示(図4)。けが防止のためにスリッパなどの履物をはいて行動する他、エレベーターでは「揺れを感じたらすべての階のボタンを押して停止した階で降りる」ことなどを強調しました。安否確認については「無事です」などと玄関ドアに掲示するといったアイデアや避難グッズなどが紹介された他、日頃から避難所の確認の必要性や防災訓練などへの具体的な提案もありました。

関心を引いたのは「家族などの電話番号は紙に書いたものを持ち歩く」ということです。携帯電話の登録データに頼っていると、充電切れや故障などの時に連絡が取れなくなるとのことでした。大規模災害時はインターネットが使えない可能性についても触れました。
大規模災害時の不安を払しょくするには日頃の備えだけではなく、管理組合を通じた防災訓練などコミュニティ充実は欠かせないものだということ様々な角度から指摘されました。
住まいとまちづくりコープとは
「住宅・マンションとまちづくり」のことは何でも相談できる場として1992年に業務を開始。マンションや団地などを総合的に診断し、長期営繕計画などを住民参加で行うべくワークショップなどに取り組んできました。
東京民報2021年5月30日号より