被害者に誠意ある対応を 「戦争の犠牲」解決求め会見〈2021年8月22日号〉

 戦後76年を迎えるも、依然として国家補償や援護が認められない民間空襲被害者、沖縄戦・南洋戦の民間被害者、外国籍元BC級戦犯者、シベリア抑留者を支援する4団体が11日、戦後処理問題のすみやかな解決を求めて記者会見を開きました。

戦後処理問題のすみやかな解決を国に求める4団体の代表ら=11日、衆院第2議員会館

 民間人の戦争被害者は国と雇用関係になかったこと、また、「国民等しく受任すべき」と我慢を強いる「戦争被害受任論」を盾に、政府は補償を拒み続けています。

 4団体は「民間人も植民地も巻き込んで国策として遂行された戦争の犠牲を、不公平に押し付けたまま」と強調。犠牲を強いた事実を認め、責任を自覚し、調査を行い、不十分でも象徴的な償いを国策として行うように訴えました。

 全国空襲被害者連絡協議会の黒岩哲彦運営委員長は、「米軍による市民への無差別爆撃は明らかに国際法(国際人道法)違反」と指摘し、「核兵器禁止条約が国際法として確立した。日本原水爆被害者団体協議会の運動に学び、国際活動を活発に展開していきたい」と決意を述べました。

 オンラインで参加した大阪空襲訴訟を伝える会の安野輝子さんは、6月に閉会した通常国会でも空襲被害者救済法案の提出が見送られることになったなかでの下村博文自民党政調会長による「戦後処理問題はすべて終了した」との発言に言及。「戦後、国から援護がなく、貧困にあえぎ、爆弾の傷によって差別され、地を這うように生きてきた空襲被害者を放置したまま」と悔しさをにじませます。「法案に反対する政治家たちは、私たちが死ぬのを待っているのでは。子や孫のためにも負けるわけにはいかない。戦後世代とも手をつなぎ、最後まであきらめない」と力を込めました。

 沖縄戦、南洋戦・フィリピン戦被害・国家賠償訴訟の弁護団長を務める民間戦争被害の補償を実現する沖縄県民の会の瑞慶山(ずけやま)茂さんは、沖縄戦、南洋戦・フィリピン戦ともに、日本国憲法の下での裁判でありながら、旧憲法の「国家無答責」の法理が適用され、敗訴が確定した経緯を説明。「司法では解決できない。本土のみなさんと連帯して、立法府で解決するしかない」と主張しました。

 今年3月に96歳で亡くなった韓国・朝鮮人元BC級戦犯者「同進会」の李鶴来(イハンネ)会長の妻、姜福順(カンプジュン)さんが登壇し、「夫はさぞ無念であったろう。最後まで戦犯問題解決のためにがんばった」と回顧。朴來洪(パクネホン)副会長の父は捕虜監視員としてジャワに配置され、戦犯裁判で15年の刑に処されました。日本人として拘禁され続けたにも関わらず、釈放後は外国人として一切の援護から外され、日本に身寄りのない彼らの生活は困窮。「なぜ日本の戦犯として罪を負わねばならぬのか。なぜ日本政府から謝罪も補償もないのか」と、朴副会長は父の思いを受け継ぎ、一刻も早い立法の実現を訴えました。

 シベリア抑留体験者の西倉勝さんは、コロナ禍で2年間ロシアへの訪問ができず、実態調査や遺骨収集が進んでいない状況を紹介。シベリア抑留犠牲者遺族の小林晃さんは、父が満州でソ連軍の捕虜になり、1947年に39歳で病死しました。その事実を知らされたのは2015年。収集された遺骨をDNA鑑定しましたが、いまだに特定できていません。小林さんは「未帰還の戦没者、行方不明者、未収集の遺骨が多く、遺族の悲しみは絶えない」と憤り、国策による犠牲者の尊厳を守り、誠意ある対応を政府に求めました。

〈東京民報2021年8月22日号より〉

関連記事

最近の記事

  1.  「裏金事件」で自民党への批判と怒りが大きく広がるなか、公職選挙法違反事件で有罪が確定した柿沢未途…
  2. 球場とラグビー場の再生案を発表した会=10日、豊島区  神宮球場と秩父宮ラグビー場を取り壊し…
  3.  今年1月に起きた日本航空機と海上保安庁機の衝突事故をうけて11日、日本航空被解雇者労働組合(JH…
  4. 市議会本会議で初質問に立つ荒木市議  市議になる前は、33年間、都内の私立校で数学教員をして…
  5. 伊藤ひろみ市議  議会に送っていただいて、4回目の定例議会が終わり、ほぼ1年経ちました。福生…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る