リニア工事 住民無視の「調査掘進」 住民ら 国交省に説明求める〈9月12日号より〉

 JR東海が地下40㍍以深の大深度地下にトンネルを掘削するリニア中央新幹線の工事について、関係住民らが3日、参院議員会館で国土交通省に聞き取りました。日本共産党の山添拓参院議員と、香西かつ介衆院東京3区予定候補が出席。トンネルが通る品川、大田、世田谷区の住民を対象に、8月下旬から3度開かれたJR東海の工事説明会や大深度地下の使用などについて、国交省の認識と見解を求めました。

調査掘進の開始を表明

 品川~名古屋間の開通(全長286㌔)を目指すリニア新幹線は、品川区~町田市の約33㌔と、愛知県春日井市~名古屋市の約17㌔が大深度地下工事。昨年10月以降、調布市で相次ぐ道路陥没事故や地下空洞発生の原因とされている、東京外かく環状道路の大深度地下トンネル工事同様、都市部の大深度地下を直径14㍍のシールドマシン(掘削機)で掘り進める工事のため、沿線住民の不安は広がっています。

 今年6月8日にJR東海が突如開いた最初の説明会では、工事の安心・安全を強調し、住民が納得できる内容でないにも関わらず、JR東海は「住民の了解を得られた」とメディアに発表。2回目となる8月下旬からの説明会では、品川区の会場に品川、大田、世田谷区の住民を集め、本掘進前の調査掘進を北品川非常口の立坑から300㍍行うことを報告しました。

大深度の前提崩れる

 国交省は聞き取りで「スケジュールありきで進めるのではない」と度々強調しましたが、参加者らは「コロナ禍で一カ所に集められたが、緊急性のある説明会だったのか」「急いで調査掘進をやる必要があるのか」と指摘。香西氏は「いつから調査掘進を始めるのか聞いても、JR東海は答えない。国交省は分からない。工事で起こりうる最悪の事態は一切想定していない。結局、掘ってみなければ分からないという話なのか」と説明を求めました。

国交省(手前)に質問する山添議員(中央)と香西衆院東京3区予定候補(右から4人目)ら=3日、千代田区

 大深度地下工事について国交省やJR東海は「地上に影響を与えない」と主張してきましたが、国交省は「大深度地下法は、あくまで大深度地下における公共事業用地確保のための使用権設定の法律であり、大深度地下の工事であれば地上に影響を与えないということを前提とした法律ではない」と明言。リニアから住環境を守る田園調布住民の会の三木一彦代表は、「我々は地下40㍍以深なら、そこで何をやっても地上に影響は出ないと聞かされてきた。それは勘違いだということか」と憤りました。

 山添氏は「これは大問題。追って議論をする。陥没事故の反省を踏まえれば、このまま進めるわけにはいかない。大深度地下法を見直すことを真剣に検討してほしい」と強くただしました。

四六時間中、振動・騒音に

 JR東海は24時間掘進を行うとしており、三木氏は「四六時間中、振動・騒音にさらされ、精神的・肉体的苦痛で病気になる人もいる。現に外環工事では、低周波による健康被害が発生している。人権問題だ」と強調。また、「(地盤の状況を調べる)ボーリング調査が十分でない」「シールドマシンは一旦動かすと止められないし、後ずさりもできないと聞く。調査掘進後、なしくずしに本掘進に入るのではないか」など、様々な意見や質問が飛び交いました。

 国交省は「我々も勉強していく」「引き続きJR東海に丁寧な説明を行うよう指導する」と答えるにとどまりました。

 聞き取り後、三木氏は「今回の説明会で初めて調査掘進という言葉が出た。地盤はすべて同じではない。たかだか300㍍の調査で何が分かるのか」と不満を吐露。先の説明会で賠償問題に関する住民の疑問に「仮定の質問には答えられない」とJR東海が述べたとして、「住民のことは考えず、話がめちゃくちゃ。許しがたい」と怒りを語りました。

(東京民報2021年9月12日号より)

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