安全と学び、柔軟な対応で 感染不安の中の新学期 23区 10区で特別対応〈9月12日号より〉

新学期が始まった都内の通学風景

 新学期への対応は自治体によって様々です。23区のうち10区が臨時休校や短縮授業、対面とオンラインを選択できるハイブリット授業など、何らかの対策を導入していることが東京民報の取材で分かりました。

 また通常通りとする区でも、感染対策にこれまで以上に力を入れ、本人や保護者に基礎疾患があるなどをはじめ感染不安から登校を控えたいと希望する家庭にインターネットによるオンライン授業を準備し、欠席扱いにしないなど、どの教育現場も感染不安と「学びの保障」との狭間で苦慮している実態が浮かび上がってきました。

世田谷区は検査を強化

 世田谷区では、1~2日を午前中までの短縮授業とし、3~10日は密を避けるため学級を2分割して隔日で登校とオンラインの分散授業とします。登校の児童・生徒の給食は実施、9月中の土曜授業は実施しません。13日以降の対応は、改めて通知するとしています。

 また、9~12月末まで感染拡大を防止するため、これまでの社会的検査に加え臨時的な対応として任意の抗原検査を実施。学校などで陽性者の発生が確認され、陽性者と接触の可能性がある児童・生徒を対象に検査キットを配布します。検査は自宅で行い、鼻孔から検体を自己採取。1時間以内に出る結果を学校に報告します。

 2学期制を採用する足立区では、小学校と中学1、2年生は9月1~11日まで臨時休校とし、中学3年生は期末試験時期なので9月1~4日は臨時休校、6~11日は4時間授業(試験)とします。13日以降は午前中のみの授業となり、対面かリモートの選択が可能で、給食は希望する生徒に提供します。分散登校は校長の判断で行い、給食を食べて午後から授業を開始する学校もあります。

 12日まで午前中の短縮授業とする練馬区は、「学びの補償を重視し、可能な限り学びに時間を割きたく、感染状況も踏まえたうえでの判断。13時間分くらい授業が不足することになるが、後で補足できると考えている」(区教委)としています。給食については「子どもたちの健康面を考え、栄養のあるものを食べてほしいという思い」(同)から提供します。部活動は原則中止します。

 港区では当面12日までは対面とオンラインによるハイブリットで授業を行い、選択できるようにしました。これまで同区のオンライン授業は、配信したものを一方的に見るだけでしたが、終了後に課題をオンラインで出せる仕組みなどを整えたため、オンラインでも出席扱いとするようになりました(従来は欠席にはしない扱い)。その後は、緊急事態宣言の動向によるとしています。

 1日から通常通り授業を始めた荒川区は、「昨年の臨時休校で子どもが見られない家庭にどう応じるかという課題があった。そのため子どもの居場所を失ってはならないし、学校は社会的な基盤であるため、通常の対面授業を基本に置きながら、オンラインという選択肢を用意」(同区教委)しました。ただ回線には限りがあるため、パンクするほどオンライン希望者が増えた場合、各学校で方針や対策を改める必要があるとしています。

※Web版、追記。新宿区の始業日を8月25日、江東区を9月6日、同区の臨時休業期間を8月25日~9月3日に訂正します。

共産党議員団が申し入れ

 日本共産党都議団は多くの学校が新学期を迎えるのを前に、「デルタ株による事態急変から、子どもたちの安全と学びを保障するための緊急申し入れ」を8月30日に行いました。

 申し入れでは▽学校の状況に応じて、登校見合わせの選択、分散登校、オンライン授業などを柔軟に組み合わせて対応すること▽親の仕事等で登校が必要な子どもへの登校や食事等の保障、濃厚接触者を狭く見ず対象者を拡大したPCR検査の実施▽無症状者からの感染を防ぐため頻回な検査体制の実施―などを求めています。

 また今後の感染状況から一定の臨時休校となった場合には、学習指導要領を弾力化し、詰め込みにならないよう授業内容の精選と、子どもの成長に必要な行事を行えるようにすることなどを求めています。

学びの保障と安全守って 共産党議員団 新学期で申し入れ

 文京、中野各共産党区議団は8月30日、「学校の夏休み明けにあたっての緊急提案」を行いました。休校する際には「希望者に学校給食の提供、ICT支援員を全校配置し、教員の負担軽減と教員間で感染対策の協議時間の保障」(文京)、「子どもの居場所と養育者の確保」(中野)なども求めています。また子どもたちがコロナ感染症の仕組みなどについて学び、自ら考え納得して行動できるよう保障することも求めています。

 中央区議団、大田区議団も同日、「コロナ感染症拡大に関する申し入れ」を行い、子どもたちの感染防止対策の強化と学びの保障を行うとともに、感染者の「原則自宅療養」の撤回、医療機能を強化した宿泊療養施設や臨時医療施設の増設・確保、大規模なPCR検査の実施などを求めています。

市部でも申し入れ

 調布市は学校の夏休み期間を9月5日まで延長し、その後12日まではオンライン授業などを行い、13日以降は感染状況を見て対策を検討するとしています。

 共産党調布市議団は、これまでの要求が一定実ったとして評価しつつ、あらためて8月31日に、「学校における新型コロナウイルス感染症防止対策に関する要望」を行いました。その中で▽13日以降の授業については分散登校なども取り入れながら、可能な限り登校して学校で学べる条件、環境、感染症対策をとる▽通常授業と異なる形になっても、給食の提供を行う▽タブレットの貸し出しを行う▽通常の育成が行われている学童クラブが「密」になりやすいことから、学校施設の活用などで「密」を回避する柔軟な対応をとる―ことなどを求めています。

 また東大和市では8月25日から2学期が始まり感染拡大の不安が広がっていることに対して▽学校の状況に応じて分散登校やオンライン授業などを柔軟に組み合わせて対応する▽それによる家庭への影響も考慮し子どもが学べる環境を整える▽学校での換気やマスクの徹底など感染防止策の強化、頻回な検査の実施―などを求めています。

 青梅市議団は8月25日、市教育委員会に夏休み明けの対策として①市内各校の状況に応じて、夏休み期間の延長、休校、分散登校の実施の検討②児童・生徒、教職員等を対象にPCR検査の実施と「感染者が判明したクラスは全員がPCR検査」や「学級閉鎖」などの基準の検討③小中学校での抗原検査にあたっては、濃厚接触者の特定を学校や養護教員任せにせず、保健所や医療機関が行うよう態勢の強化―などを求めました。共産党日野市議団も同日、申し入れを行っています。

医療ぜい弱な離島 対策の強化を

 新島村の綾とおる村議は8月25日、「命を守ることを最優先に新型コロナ感染症に関する要望書」を村に提出。医療体制がぜい弱な新島村でも8月に12人の陽性者が判明しています。

 要望では原則「自宅療養」の方針を撤回し、島しょの患者は「本土の医療機関に搬送」との原則を貫くよう都に強く求めることなどを要望。新学期を控え、教職員へのワクチン接種、PCR検査、分散登校、リモート学習など感染から児童生徒を守る対策の強化、同村での濃厚接触者の追跡検査の対象拡大、検査希望者全員の検査などを保健所と連携して行うことなどを求めています。

教育条件の緊急整備を 東京総合教育センター・児玉洋介所長の話

 パラ観戦も休校・オンライン対応も、区市によって判断がまちまちです。そうなるのは、国と東京都のコロナ施策が一言でいえば、アクセルとブレーキを同時に踏みこむ指示を現場に下ろしているだけだからです。

 学校は、学びだけでなく、心とからだの発達成長が保障できる、最も安全で安心な子どもの居場所でなければなりません。コロナ禍だからこそ、この役割をすべての子どもたちに保障できる学校へ、教育条件を緊急に整備することこそが、教育行政の最大の責務です。とりわけ、感染対応も含め子どものあらゆる困難に対応できる、教職員の緊急増員が不可欠です。

(東京民報2021年9月12日号より)

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