清瀬わかば会 本人・家族の感染時を支援 障害者の対応急いで 健康管理や感染防止に困難〈9月19日号より〉

 介護・介助が必要な障害児・者が新型コロナウイルスに感染した場合、意思の疎通など特段の配慮が必要で一般のコロナ病床などでは対応は困難です。障害者本人が感染しなくとも介護を担う家族がり患した場合、日常生活を送ることができません。濃厚接触者となった場合の隔離なども一般家庭とは別の対応が必要です。こうした人たちに積極的に支援を行う社会福祉法人「清瀬わかば会」に課題を聞きました。

 清瀬わかば会は清瀬市内で知的障害のある人を対象に放課後支援の学童保育、作業所、グループホームの運営と支援者の人材育成をしています。

「具合が悪くても伝えることができないから注意を払う」と話す法人スタッフ=清瀬市

 知的障害のある人は新型コロナワクチン接種の先行接種対象とされているように、感染のリスクは高いとされています。人込みや繁華街に行かなくても身の回りに十分な配慮ができにくかったり、感染防止の内容が理解しにくいためです。また体調の異変を他人に伝えることができません。病院での検査は日常でも理解や想像ができず、困難を伴うため麻酔を使用することもあり健康管理は容易ではありません。

 わかば会では、マスク着用も人気キャラクターをあしらうなど、つけたくなる工夫と誘導に心を砕いていると語ります。

 こうした中、同会では利用者(障害者)や家族が感染した場合、短期入所施設(ショートステイ)で「コロナ対応マニュアル」を作成し、受け入れをしています。

 施設内では徹底したゾーニングを行い、医療機関との連携の他、対応にあたる職員は防護服の着脱や帰宅方法なども含めてロールプレーイング(実施研修)を実施。発熱して自宅待機を指示された際や在宅療養時の対応が可能になっています。

 さらに同会では利用者家族の支援にも力を入れています。障害者の介助を行う家族は密着度がどうしても高くなります。家族が感染した場合、保健所と連携して入院支援やホテル療養を促します。感染が発覚後、すぐに安心して療養できるように利用者を預かり、在宅療養の場合には買い物支援も行います。

 これは自分のことを後回しにして介助を行いがちな家族を守るという点で重要だといいます。

乏しい財政支援

 こうした設備や資機材対応に行政の財政支援は乏しく、コロナ禍が法人に新たな負担をもたらせています。わかば会では、コロナ関連の対応を行う職員に「手当」を支給していますが、法人の努力で補っているために財政事情は厳しいといいます。さらに病床ひっ迫の今、医療機関のサポート、とりわけ医師の巡回訪問や酸素吸入の体制構築が急務だと訴えます。

 社会福祉法人がここまで努力しなくてはいけないのは、行政の物心両面での支援が追い付いていないからです。本来、感染時は入院対応が基本ですが、民間の病院では「障害」を理由に入院を断られるケースが出ています。最終的に都立病院で受け入れており、サービス管理責任者の女性は「都立・公社病院の役割は大きい」と強調します。

感染廃棄物の処理など感染を広げない工夫が随所に徹底されている

 また、入院時、治療の内容も障害者本人は理解できないことが多く、普段と違う環境で不安からパニックを起こすことも少なくありません。現状は家族や介護者の面会が不可能なため、いっそう不安が強くなるとのことです。「付き添いはできなくとも一日に数回の見守りができると心身ともに安定する」とスタッフは話します。

 わかば会は他の団体と一緒に昨年10月に障害の特性に応じた支援を求めて「新型コロナウイルス対策に関する陳情署名」を都議会に提出し、趣旨採択となっています。新型コロナウイルス感染症が子どもにも広がっているため、都所有の建物を活用した障害者療養施設の設置や保健所機能の充実、通所施設も含めた職員の週1回のPCR検査の公費での実施などが必要だと訴えています。

(東京民報2021年9月19日号より)

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