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五輪選手村都有地 9割引は違法 正す会が結審受け総会 官製談合疑惑を指摘〈10月3日号より〉
- 2021/9/30
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東京都がオリンピック選手村整備の名目で、中央区晴海の都有地(13・4㌶)を周辺地価の1割に当たる129億6000万円で不動産会社11社に売却したのは違法だとして、住民訴訟を起こしている「晴海選手村土地投げ売りを正す会」は9月18日、江東区で第4回総会を開きました。訴訟は8月31日に結審(判決日は未定)しましたが、これまでの4年間に積み上げてきた努力を公正な判決に実らせようと、今後の方針を確認しました。

中野幸則会長(原告団長)が「裁判では都が主張してきた言い訳や、情報開示を巡るあいまいさ、訴訟を起こすこと自体間違いだとする政治参加を閉ざすような姿勢が明らかになった。都民の目から見て正しい司法判断が出るよう、引き続き頑張りたい」とあいさつ。訴訟代理人の千葉恵子弁護士、中川勝之弁護士が裁判で明らかになったことなどを報告。市川隆夫事務局長が、この間の取り組みを踏まえて、世論喚起と裁判長への要請、都と都議会への働きかけなどの活動方針を提案、承認されました。
都民の財産を「投げ売り」
晴海選手村は銀座から3㌔ほどの一等地にあり、面積18㌶の広大な都有地につくられました。元々防潮堤の外側で住宅は建てられなかったものを、都が2・5㍍盛り土し、道路、上下水道などを540億円かけて基盤整備しました。
都が不動産会社に譲渡した13・4㌶の価格は129億6000万円(2016年12月に契約)ですが、正す会が近隣の地価を基に試算した適正価格は約1300億円とし、相場のわずか1割で都民の貴重な財産を「投げ売り」したと主張しています。
五輪後に宿泊施設を住居棟に転用し、50階建ての超高層住宅棟や商業棟などを建設する大規模な都市開発が計画されました。譲渡契約を結んだ11社は、三井不動産レジデンシャル、NTT都市開発、住友商事、東急不動産など、どれも名だたる大手不動産・開発デベロッパーばかり。このうち7社には元都幹部が天下りしていました。
この譲渡契約を巡って正す会メンバーら33人が、「不当に安価だ」として2017年8月、小池百合子知事らを相手取り、不動産会社11社に対して不当・違法に値引きした約1200億円を請求するよう求める住民訴訟を東京地裁に起こしました。裁判では都は何を根拠に相場地価の1割で譲渡額を試算したのかが大争点となりました。
コンサル報告書がマニュアルに
原告は都がコンサルタント会社、パシフィックコンサルタンツ(以下パシコン)に委託して作成した「選手村開発方針検討支援業務報告書」が、晴海再開発事業のシナリオ・官製談合のマニュアルだと指摘。このシナリオに従って譲渡価格が決定されたと主張。また原告が再三にわたって開示請求した都と事業協力者(三井不動産ら13社)との「協議議事録」は、「廃棄したので不存在」として開示せず、談合疑惑が深まりました。

一方、都側の証人で土地価格を鑑定した鑑定士は周辺地価を基に算出できなかった理由に、タワーマンションを中心とする開発を義務づけ、五輪終了までは選手村としての利用制限を課された特殊性などをあげています。
都市再開発の公平性を傷つけた
経過報告した千葉弁護士は、原則必要な不動産鑑定評価基準に則った不動産鑑定がなされていないパシコン提出の調査報告書を基に、1平方㍍当たり9万6700円の売却予定額を決めた官製談合疑惑だと強調。提訴後、都が不動産会社の住宅販売収益が当初予定を上回った場合、収益の一部を納付させる方針に転換した背景には住民訴訟で、こうした事実が明らかになることによる都民の批判をかわす狙いがあったと指摘しました。
中川弁護士は「都の行為は都市再開発事業手続きの公平性、信頼性を大きく傷つけた」と批判。「都民のためというなら堂々と説明責任を果たすべきだ」と訴えました。
小中学校用地は5倍で売却
日本共産党の、おぐり智恵子中央区議は、中央区が晴海選手村の後利用で小中学校などを整備するため、都有地約3・1㌶を177億円(1平方㍍当たり約56万円)で購入する計画を紹介。
公共施設の整備のための用地として路線価の5~6割で都から購入できる「公共減額」ですが、それでも11社の購入単価の5倍以上で、「納得できない」とのべました。
(東京民報2021年10月3日号より)