インタビュー 菅首相辞任と衆院選 「活路は共闘」総選挙でも 自民党総裁選 ラベル替えても中身は同じ

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 菅義偉首相が総裁選不出馬を表明したもとでの自民党総裁選が、29日に投開票を迎えます。11月までに必ず行われる総選挙を前に、政治情勢の大激動が続いています。政治学者の五十嵐じんさん(法政大学名誉教授)に、緊急インタビューしました。

―菅首相の突然の辞任をどう見ていますか。

五十嵐仁・法政大学名誉教授

 最重要課題としていた新型コロナ感染拡大の阻止に失敗し、政権運営に行き詰まった結果で、当然のことだと思います。

 感染拡大の背景にあるのは、反対を押し切って強行した五輪・パラリンピックによってある種の「楽観バイアス」を広げてしまったことです。

 支持率がじり貧状態に陥り、このままでは選挙をたたかえないという「菅離れ」が自民党内で拡大した。これに焦った菅首相は二階俊博幹事長を外す役員人事で挽回を策したものの逆に反発を広げ、〝策士策に溺れる〟結果になりました。人事介入によって事態を打開するという菅さん一流の手法が、かえって破綻を招いてしまったのです。

 ―辞任は、安倍・菅政権の9年間の行き詰まりでもあると思います。

 今回の政権投げ出しには、長期・中期・短期の背景があります。

 長期的には自己責任論の新自由主義的政策を、自公政権はずっととってきました。ケア軽視で効率優先、医療や福祉に力を尽くさない政策を続けてきた結果、コロナ禍によって必要な人に必要な医療が届かない、とんでもない事態が生じました。

 中期的には、安倍・菅政権の9年間続いた、国民の声を聞かず、官邸支配で問答無用の独善的政治の過ちがあります。そのことは、コロナ対策でも、専門家の意見を聞かず、国民に説明をせず、責任も取ろうとしない姿勢として現れました。

 菅首相も、安倍前首相の「アベノマスク」などの迷走のように、科学無視で後手後手の対応という「コロナ失政」を継承しました。これが短期的な背景です。

 ―現在、自民党総裁選がたたかわれています。

 立候補者は安倍・菅政権を支えてきた人ばかりで、誰が選ばれても大きな変化はありません。いくら「ラベル」を張り替えても、ビンの中身は腐っています。中身ごと取り換える必要があります。

 かつての自民党は、総裁の交代で「擬似政権交代」のような形で目先を変えることができました。でも、今は派閥の違いがほとんどなくなり、結束力も弱くなっています。「安倍一強」に支配され、異論や反対する者の居場所がなくなったのが、現在の自民党の姿です。

 メディアは総裁選で大騒ぎしていますが、これは自民党のねらい通りで、新内閣誕生で支持率が高いうちに衆院選になだれ込む戦略です。メディアへの批判も重要ですが、支持率が一時的に高まるだろう新政権とのたたかいを覚悟して、野党は準備しなければなりません。

野党共通政策で決戦へ陣立てが

 ―総選挙を前に、市民連合と野党の共通政策が結ばれました。

 いよいよ総選挙という決戦に向けた「陣立て」ができ、あとは本気になって味方を増やし、結束を固めて国民にアピールするだけという状況がつくられました。

 2009年に自民党が惨敗して、民主党への政権交代が起こったときも、任期満了目前の総選挙で、直前の都議選で自民党が大敗しているなど、今年とよく似た状況でした。

 その際は300の小選挙区のうち148選挙区で共産党が一方的に候補者を取り下げ、一対一の対決構図をつくりました。

 それに対して今回は共産党を含む共闘が積み上げられ、共通政策の合意もつくられ、政権交代後の見取り図が明確になっています。市民と野党の共闘の実績もある。09年の時とは、政権交代に向けた準備の積み重ねも、草の根で支える力も段違いです。

未来がかかったかつてない選挙

 ―総選挙に向けて市民と野党の共闘の発展のために重要なことや、東京にとっての課題は。

 野党と市民連合の共通政策で、この「政策を実行する政権の実現をめざす」としている点が重要です。単なる選挙公約とするだけでなく、合意した政党が政権に加わって実現をめざす腹を固める必要があります。

 首都東京の課題は、「活路は共闘にあり」という都議選での戦い方と教訓、「東京モデル」を全国に発信していくことです。立憲野党が共闘すれば「リアルパワー」となって大きな力を発揮できる。それが、横浜市長選でも実証されました。

 都議選では、野党統一となった共産党候補がトップ当選した選挙区もあります。小選挙区で勝てるということです。これを総選挙でも証明してもらいたいと思います。

 同時に、都議選や横浜市長選の時とは、状況が大きく変化していることも直視しなければなりません。自民党は首相を変えて新しい「看板」でアピールしようとしており、メディアの大宣伝と「ご祝儀相場」で支持率も上がるでしょう。「敵失」や「追い風」頼りではなく、何があっても共闘を崩さず勝ち抜く、固いスクラムが重要です。

 今度の総選挙には、日本の命運と進路がかかっています。政権に挑戦し勝利すれば、新しい政治が始まる可能性がある。これほど大きな意義とやりがいのある選挙は初めてではないでしょうか。一票の重要さを自覚して、多くの人が投票に行き、間違いのない選択をしていただきたいと思います。

(東京民報2021年9月26日号より)

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