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- 特別支援教室 子ども支える教育、守って 都が指導期間を制限 保護者、教員ら批判広がる〈10月10日号より〉
発達障害のある子どもたちが、障害に応じた指導を受けられる特別支援教室(末尾に、ことば)をめぐって、東京都が、指導期間の制限や、教員配置基準の切り下げなどを進めようとしています。子どもたちを支える教育条件の引き下げは許されないと批判が広がっています。
教員配置の切り下げも
「子どもたちはもちろん、保護者にとっても、私たち特別支援教室の教員にとっても、通常学級の担任にとっても、デメリットだらけ。なぜ、都がこんなことを進めようとしているのか、わからない」―特別支援教室の教員は、口をそろえて都の方針に疑問を呈します。
都教育委員会は今年3月、特別支援教室のガイドラインを改定し、子どもたちが指導を受けられる期間を原則1年、最長でも2年までとして、期間終了時に継続を判断する、期間の制限を打ち出しました。さらに、来年度に向けて、区市町村教育委員会に、これまで児童・生徒10人に1人だった教員の配置基準を、12人に1人に切り下げる方針を説明しています。
23区西部の区の特別支援教室で教える男性教員は、4つの学校をまわって子どもたちを指導しているといいます。
特別支援教室は、自治体によって形態が異なるものの、多くの場合はこの区と同じく、複数の学校を教員が巡回する仕組みです。
この教員は、「年度はじめは10人の子どもに1人の教員で始まるものの、毎年、年度途中に特別支援教室に新しく通い始める子どもが増えていく。移動にも時間がかかるし、教材の準備など、連日、仕事を持ち帰る状態」と話します。
多摩地域東部の自治体の特別支援教室の男性教員も、「年度初めから12人を担当する仕組みに変わると、年度末には17、18人くらいまでは増えるのでは」と予想します。
非現実的な期限の制限
教員は、「特別支援教育は『オーダーメイド』」と一様に話します。
多摩地域南部の市の女性教員は、「子どもそれぞれに個性があり、困っていることも、それを解決する方法も違う。私たちも学びながら、一人ひとりに応じた教材や手だてを用意しないといけない。担当する子どもが増えれば、一人にかけられる時間や労力が確実に減ってしまう」と話します。
指導の期間を制限する方針についても、この女性教員は、「一つの課題ができるようになったら、それで解決ではない。勝ち負けにこだわりが強くて、じゃんけんなどで負けるたびに泣きわめいてしまう子が怒らなくなったら、次は、友だちのことをほめたり、上手に遊べるようになろうという課題に進む。日々の成長で目指す力が変わっていくのに、期限で区切るのは現実的ではない」と指摘。区部の男性教員も、「担当している地域の子どもの半数以上は、3年以上、特別支援教室に通っている」と話します。
保護者らが緊急の署名
特別支援教室は、保護者にとっても、専門的な知識を持った教員が、長く子どもを見守ってくれることで、さまざまな不安や悩みを相談しやすい場になっています。通常学級の担任からも、「支援教室に通っていれば、課題を抱えた子どもを複数の教員の目から見られるのに、2年間以上は通えなくなると、自分一人で担当するしかなくなってしまう」との不安が寄せられるといいます。
都は、教員の配置基準の引き下げによって、全都で340人ほどの教員の過員(定数以上の人員)が生じるとしており、区市町村によっては通常学級担任などへの異動の打診が始まっています。学校関係者や教職員組合への正式の説明などもないままで、現場に戸惑いが広がっています。
日本共産党都議団は9月30日、都教育長あてに教員の配置基準の引き下げや、指導期間の制限を止めるよう申し入れました。とや英津子都議は「子どもたちを支える大切な教育条件の後退は許されない」と求めました。
都の担当者は、国が法律で13人の子どもに1人の教員という配置基準を定めたことをあげ「10人に1人という都の暫定の基準を、他の支援策をもうけながら見直すもの」と説明。指導期間については、必要な場合は2年間を超えても指導できると説明しました。
東京都教職員組合も9月24日、計画の撤回を都教育長あてに申し入れたほか、保護者などでつくる「障害のある子どもたちの教育・生活をゆたかにする東京の会」が、緊急の請願署名に取り組んでいます。
ことば 特別支援教室 発達障害のある子どもたちが、通常の学級に在籍しながら、週に数時間、専門の教員から障害に応じた指導を受けます。同教室に通う児童・生徒は、2016年度の都内1万1545人から20年度は2万6323人と約2・3倍に増えています。
(東京民報10月10日号より)