【街角の小さな旅16】放送の歴史を追体験し学ぶ NHK放送博物館と愛宕山〈2021年12月12日号より〉

汽笛一聲新橋を

はや我汽車は離れたり 愛宕の山に入りのこる

月を旅路の友として

(鉄道唱歌)

 その愛宕の山は1925年、日本で初めてラジオの本放送がおこなわれたところ。放送博物館は1956年に開設されました。

 館内にはラジオ放送の開始からテレビ放送の今日までの移り変わりが実際に使われたマイクや録音機器、テレビカメラ、ビデオ機材などで追体験できるように展示されています。

 また、ラジオ放送開始からのイラストやテレビ放送開始当時のドラマの紹介、人気のあった人形劇の人形の展示などなつかしい展示がつづき、放送体験スタジオではニュースや気象予報などのバーチャル映像の体験ができます。

 20世紀の初頭に登場した電波放送は、アメリカで民間企業が自社製品の宣伝のため1920年に開設したのがはじまりで、日本も遅れじと放送所を創設しました。この電波放送は勃興しつつあった資本主義の有力な宣伝ツールとしてあっという間に世界にひろがりましたが、日本の場合はくわえて1923年の関東大震災で新聞社が機能不全に陥り、情報伝達に無線の電波が活躍したことが普及を加速させることになりました。

放送の歴史を追体験できるNHK放送博物館

 スタート時に1600台に過ぎなかった受信機が6年後には100万台を突破するという勢いでした。

 愛宕山での本放送の前におこなわれた試験放送の第一声で日本放送協会の初代総裁後藤新平はラジオの機能として「文化の機会均等」「家庭生活の革新」「教育の社会化」「経済活動の活性化」を掲げました。時はあたかも大正デモクラシー。資本主義のもと封建制から脱皮し近代化をすすめる国づくりの旗印となるものでした。

 しかしその後、天皇制を頂点とする帝国主義台頭のもとで「大本営発表」に象徴される軍国主義の翼賛体制に組み込まれていきます。戦後、民主主義を誓った放送界でしたが、あらたな象徴天皇制と財界の支配の強まりのもとで変質を迫られ、メディアの中立性・公平性、国家権力からの独立があらためて問われる今日を迎えています。

 放送博物館ははからずもこのことを学ばせてくれました。(最寄り駅東京メトロ御成門駅・虎ノ門ヒルズ駅)

愛宕山

愛宕山の出世の石段

 愛宕山は自然に形成された23区内での最高峰(標高26メートル)の山。江戸期には桜山と呼ばれ、雪月花の景色を楽しみ江戸の町並みを眺める行楽地としてにぎわったところです。“出世の石段”は徳川第3代将軍の所望に応えて急な石段を馬で駆け上がって梅の枝をとり、出世を果たした武士の逸話に由来します。その石段は傾斜40度・段数86段。女坂、エレベーターもあります。麓のトンネルは23区で唯一の隧道(山をほってつくられた山岳トンネル)。

 愛宕山を六本木に向かって下ります。

大倉集古館

 大倉集古館は東洋各地の絵画や彫刻、工芸品(国宝3点、重要文化財13点、重要美術品44点)など数多くの美術品を収蔵する日本で最初に設立された私立美術館。

大倉集古館

 建物は日本近代建築を代表する建築家伊東忠太の設計によるもので国の有形登録文化財に、中国古典様式の展示室は東京都の歴史的建造物に指定されています。展示室の入り口には灯籠や鎌倉時代の金剛力士像などが展示され、年数回の企画展は1月10日まで孤高の現代水墨画の篁牛人たかむらぎゅうじん展。篁は「渇筆」(渇いた筆などでにじみを極力使わずに紙に刷り込むように墨を定着させる)を用いて中国や日本の故事・伝説などを題材に独自の墨絵の世界を創出しました。圧倒的な質感で迫ってくる女性像、思弁的な男性像など静寂な時空間の世界が魅了します。

智美術館

菊池寛実記念 智美術館

 菊池寛実(かんじつ)記念智(とも)美術館は富本憲吉や八木一夫などの現代陶芸家の作品を収蔵。隣接の西洋館は国の有形登録文化財で限定見学会で公開。「第9回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉」は12月11日から。

(東京民報2021年12月12日号より)

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