9月末に廃止された新宿区立「高齢者いこいの家清風園」(新宿区中落合1)を巡り、区民7人が11月29日、区に廃止処分の取り消しと施設の存続を求める行政訴訟を東京地裁に起こし、新宿区役所で記者会見しました。
清風園は1962年開設。延面積1265平方㍍の建物内に浴室や大広間、談話室、各種ホールなどがあり、60歳以上の区民は無料。入浴やカラオケ、囲碁をはじめ、あらゆる交流・活動が可能でした。区は老人福祉法に基づいて2018年2月に定めた「高齢者保健福祉計画」で、重点施策を支える新規事業として清風園の「機能拡充等を検討」するとしていましたが、翌19年12月議会に突然、設備の老朽化や利用者減を理由に廃止し、跡地の利用計画を報告。住民は「守る会」を結成し、廃止反対の署名運動も広がりましたが、20年6月の区議会で廃止条例が可決されました。
原告の訴訟代理人である笹山尚人、加部歩人両弁護士らが訴訟理由を説明。清風園の機能拡充等の検討を定めた区の「高齢者保健福祉計画」に反して廃止することは、正当化できないと強調。清風園の廃止理由の第一にあげていた老朽化で、改修に約2億円かかり、解体関連費用は1億9000万円と説明していたのに、廃止決定後に5億1400万円に大幅増となることが判明したことは、重大な事実誤認だと指摘しました。
その上で、区の廃止理由に多くの疑義があり、多くの住民が反対しているのに、廃止方針を見直さず、廃止を強行するのは、地域自治の推進を記した「区自治基本条例」に反すると強調。地域住民の声を聞く民主性にも欠くとし、「高齢者福祉をないがしろにする手法が許されるのかを問いたい」としています。
原告団長の生江明さん(73)は、「住民が反対しても『おおむね理解が得られた』という言葉で片付けられた。住民自治が壊されてしまうかの岐路にある」と訴えました。他の原告も「区はうそで塗り固めた答弁ばかり。こんな理不尽が通っていい訳がない」「廃止の賛否は一度も問われていない。22年間、町会長を務めた人も区は虚偽答弁をしていると言っている」と発言しました。
(東京民報2021年12月12日号より)