今年9月、板橋区加賀に立つ5階建てマンションの4階に突如としてKDDIの携帯電話基地局アンテナが2本設置され、周辺住民から不安の声が相次いでいます。
加賀は区の「景観形成重点地区」に指定された閑静な住宅街で、子育て世代や高齢者にも人気の地域。基地局設置工事の際、業者からは「電気工事」とだけ伝えられましたが、設置後に携帯基地局と判明。第4世代移動通信システム(4G)と第5世代(5G)の電磁波を放射すると知り、健康被害などを心配する住民らが11月6日、「KDDI基地局の廃止を求める会」を立ち上げました。
会のメンバーは現在まで、電磁波問題に詳しい大久保貞利氏(電磁波問題市民研究会事務局長)と黒薮哲哉氏(ジャーナリスト)を講師に招き、携帯基地局が社会や人体に及ぼす影響の可能性について、勉強会を3度開催。KDDI株式会社に基地局の撤去を求める署名活動も行い、233人分(12月20日時点)が集まりました。

メンバーは板橋区役所の3部署に出向き、坂本健板橋区長にも手紙を送り、携帯基地局の設置に関する説明や規制を求めました。しかし板橋区は建築基準法上、高さ15㍍を超えなければ確認申請は不要だとし、詳細は総務省に問い合わせるよう返答がありました。
携帯基地局の設置は自治体によって規制が異なり、多摩市では携帯電話等通信事業者に「周辺住民への事前周知」と「市への事前報告」を要請しています。
5Gは現在利用されている4Gと比べ、通信速度10倍、遅延1㍉秒、端末の同時接続10倍(最大100万台/1平方㌔)が可能となります。総務省は自動運転や遠隔医療など、さまざまな分野での導入を見込んでいるものの、5Gの電波は数百㍍から1㌔程度しか飛ばず、4Gの100倍もの基地局が必要。通信量の増加に伴い、電力消費量も大きくなります。
世界では5G電磁波による人体への健康被害が懸念されていますが、総務省は安全性を強調。一方、欧州連合機関の一つ欧州議会科学技術選択評価委員会(STOA)は今年7月、「電磁界はヒトに対して、おそらく発がん性がある」と報告しました。あくまで「おそらく」という可能性を示す表現にとどまり、長期にわたる十分な研究結果が存在しないのが5Gの大きな問題です。
会のメンバーは、「ペースメーカーが入っている人は命の危険を感じている」「5Gが安全だという証拠はなく、健康被害との因果関係が証明できないのが電磁波問題の恐ろしさ」と訴え。「CSR(企業の社会的責任)に疑問を抱く。道義的な部分が問われる問題」と、企業の姿勢に対する憤りの声もありました。
来夏にかけて板橋区には、KDDIの携帯基地局だけで65カ所に設置予定。住民らが声を上げたことで来年1月23日、KDDIによる住民説明会が開かれる予定です。
都議会第4回定例会は15日、本会議を開き、年末年始の新型コロナ対策などを盛り込んだ一般会計補正予算(1047億円、全会一致)の他、全27議案を可決し、閉会しました。日本共産党都議団が提出した、子ども医療費無料化条例案2件は、自民、都民ファースト、公明、維新の反対多数で否決しました。
(東京民報2021年12月26日号より)