日常を脅かす工事やめて リニア 差し止め裁判始まる〈2021年11月7日号より〉

 JR東海が地下40㍍以深の大深度地下で進めるリニア中央新幹線(東京品川区―名古屋間)のトンネル工事から住民の安全で平穏な生活を守るため、田園調布(大田区)、東玉川(世田谷区)の沿線住民ら24人が原告団になり、同社に工事の差し止めを求めた訴訟の第1回口頭弁論が10月26日、東京地裁で開かれました。

 原告団は7月19日、92ページに及ぶ訴状を提出。JR東海から届いた10月19日付けの答弁書には、「1.原告らの請求をいずれも棄却する 2.訴訟費用は原告らの費用とする―との判決を求める」と、極めて定型的な文言が3行記載されているだけでした。

開廷前に街頭で集会を行い、リニア新幹線のトンネル工事による危険性を訴える原告団長の三木氏=10月26日、千代田区

 開廷前に東京地裁前でミニ集会が行われ、関係住民のほか、「ストップ・リニア!訴訟」の原告団、東京外環道路訴訟の関係者らが応援に駆けつけました。

 原告団長の三木一彦氏は、JR東海がアメリカのワシントンとメリーランド州ボルティモア間に超電導リニアを売り込んだが、住民の反対により建設工事が頓挫している現状を説明。「どの国でも、環境破壊と人権侵害をもたらすリニア工事が歓迎されるわけがない」と訴えました。

地下80㍍に帯水層

 この日の裁判では、田園調布在住の原告2人が意見陳述。4人の子どもを自然豊かな環境で育てたいと現在の土地に移り住んだ女性(49)は、リニア新幹線のトンネル工事と同じシールドマシン(掘削機)を使った大深度地下のトンネル工事により、世田谷区を流れる野川の水面に致死濃度の酸欠ガスを含む気泡が発生するようになったと指摘。多摩川で遊ぶ子どもたちの身を案じ、「私たちの日常を奪い、子どもたちの未来を脅かすのはやめてほしい」と訴えました。

 トンネルルートの直上に夫婦で居を構える男性(69)は、自宅の敷地3カ所をボーリング調査し、そのうち1カ所は地下90㍍まで調べました。その結果、シールドマシンが掘削する予定の地下80㍍付近に、帯水層(水を含む砂の層)の存在を確認。トンネル工事により帯水層が削られると「地盤の空洞化が生じ、地盤沈下から家屋が傾く」と力説。さらにJR東海による工事説明会の告知が限定的にしか行われず、説明会の再開催を求めたが拒否されたことを受け、憲法29条の財産権、25条の生存権が脅かされ、31条の適正手続きに反すると訴えました。

 意見陳述に対してJR東海側から反論などはなく、原告に差し止め請求の棄却を求めました。次回の口頭弁論は来年1月17日の予定です。

騒音で死亡リスク

 閉廷後は、参議院議員会館で報告会を開き、社民党の福島みずほ、日本共産党の山添拓両参院議員から寄せられた連帯メッセージを紹介。訴訟代理人の梶山正三弁護士は、トンネル工事の危険性や、騒音による身体的影響などを説明。「統計上、道路交通騒音で生涯死亡リスクは明らかに高まる」と資料をもとに語りました。

閉廷後に開かれた報告会

 樋渡俊一弁護士は裁判内容を解説し、「今後は工事がいかに危険なものかを、裁判長に理解させることが重要なポイント」と強調しました。

 参加者からは「JR東海は調査不足」「調査掘進が始まり驚いた。恐怖を感じる」など、声が上がりました。

 翌27日、岐阜県中津川市のリニア新幹線トンネル工事現場で崩落事故による死傷事故が発生。工事に対する住民の不安は尽きません。

(2021年11月7日号より)

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