【アーカイブ】“ありのまま”の尊重を 自殺対策 教育行政に求められること とや英津子都議に聞く〈2020年10月25日号より〉

 コロナ禍のもと、女性や若年層の自殺者増加を心配する声が出ています。8日閉会した都議会定例会では、28歳の息子を自殺で亡くした母親が提出した「自殺対策をさらに推進することに関する陳情」が全会一致で趣旨採択されました。文教委員会で唯一質疑に立った日本共産党のとや英津子都議に、都の教育行政に何が求められているかを聞きました。

自殺対策推進の陳情採択

 陳情は息子さんを自殺で亡くした方が「公教育においてSOSの出し方の教育などを進めて欲しい」という思いで都議会に出されたものです。新型コロナウイルス感染症が都民生活に大きく影響を与えているもと、感染症によって失われる命とともに、これに関連する死もあるとして、自殺対策の強化を求めています。

かけがえのない命を守りたいと語る、とや都議

 陳情者ともお話をさせていただきました。息子さんが亡くなってから、時が止まったままだそうです。つらい日々を送っていることを話してくれました。だからこそ若者の自殺を防いで欲しいとの思いで陳情したといいます。話を聞き、涙をこらえることができませんでした。

 日本の自殺者数は、1998年以降14年連続で3万人を超える状態が続いていました。2012年になって15年ぶりに3万人を下回りました。自殺者減少の年齢層では、主に中高年の自殺が減少したことによるものと言われています。

 その一方で、若年層の自殺者数については横ばいであり、少子化によってその年代の人口が減少していることを考えれば、むしろ自殺死亡者率は増加している状況にあります。10代から30代のいわゆる青年層の死因は自殺がトップです。こうした状況を背景に、2016年自殺対策基本法が改正されました。

コロナ休校の影響は深刻

 改正された基本法の特徴は、学校の役割として、個人をともに尊重しあい、心理的負担を受けた場合の対処の仕方を身につけさせる教育を行うことが盛り込まれました。

 陳情の質疑で、都内公立学校の自殺者の推移と都の認識を聞きました。毎年20人近い命が失われ、法改正後も減少してないことが分かりました(表参照)。私立学校でも、横ばいだとのことです。また、「いかなる理由であれ、子どもが自らの命を絶つことはあってはならない」との大事な答弁がありました。

 新型コロナ感染による一斉休校で、子どもたちは友人にも会えず、公園に行けばしかられ、家庭学習を自主的にやらなければならないという状況が続きました。

 国立成育医療研究センターの「コロナこどもアンケート」の第2回調査報告書では、全体の72%に何らかのストレス反応がありました。「眠れない」「マスクがいやだ」「目標がない」など自由記述には切実な声が書かれています。

社会構造上の問題の認識を

 厚生労働省の自殺対策白書では、10代の自殺の原因・動機は学校でのいじめや教員による暴力、ハラスメントなど学校問題が最多です。そういった意味からも、自殺は個人の問題にとどまらず、その多くが「社会構造上」の問題とも言えます。

 しかし都は子どものSOSの出し方に関する教育を推進しているとは言いますが、自殺が「社会構造上の問題」との認識は示しませんでした。都が2018年2月に策定した、子どもたちの自殺対策方針にも、こうした認識はありません。

 学校で子どもたちは過度な競争で優劣がつけられたり、校則などでがんじがらめになっています。そうした中で、生きづらさを日々感じているはずです。だからこそ今、子どもたちには多様でありのままの自分の存在や価値が尊重され、一人ひとりが人間として大切にされていることを実感しながら成長できる、教育が求められています。

 そして困った時は自己責任ではなく、まわりの人と助け合えば良いと思えるようになることが、大人になってからも本人を勇気づけるのではないでしょうか。根本的にはそうした学校のあり方の変革が求められています。

 コロナ禍のもとで、子どもたちに加え若者も、内定の取り消しや解雇などで、いっそう深刻な状況におかれています。前途に最も希望を持てる世代の人たちが、自ら死を選ぶ社会は、構造的な病弊を抱えていると言わざるを得ません。

 自殺の多くが、追い込まれた末の死であり、避けられる死でもあります。かけがえのない命を守るために、今できることを都民のみなさんと考え、都に求めていきます。

(東京民報2020年10月25日号より)

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