【アーカイブ】高輪築堤 残す英断が後世のために 専門家を招き講演会〈2021年12月26日号より〉

 日本最古の鉄道遺構「高輪築堤」の全面保存を求めることの重要性を学ぶ講演会が18日、慶應義塾大学の三田キャンパス(港区)で開かれました。主催は東京都歴史教育者協議会、共催は高輪築堤の全面保存を求める会、後援は一般社団法人日本考古学協会です。

開会のあいさつで、慶応義塾大学経済学部の大西広教授は、JR東日本が事業費約5500億円規模で進める「品川開発プロジェクト」により世界遺産級の文化財が破壊されていることについて、「私たちにとって重要なのは、文化的な住環境を守ること」と強調。全面保存を求める会の菊池久共同代表は、JR東日本に対し「最後まで全面保存を訴える」と意気込みました。

鉄道開業時そのままの石垣が見つかった高輪築堤

 最初に、昭和女子大学・放送大学非常勤講師、習志野市文化財審議会会長の山岸良二氏が「モース先生と日本考古学発祥」について講演。アメリカの海洋生物学者、エドワード・S・モース氏(モールス発信機発明家のサミュエル・モールスの親戚)は、「シャミセン貝」研究のため明治10年に来日。鉄道に乗り横浜から新橋に移動中、大森の停車場で貝の堆積塚を発見しました。大森貝塚と名付けられ、日本考古学発祥の地として現在も親しまれています。

 モース氏は、大森貝塚から発掘された土器に「縄文土器」と命名。この縄文の姿を大きく変えた遺跡が、青森県にある山内丸山遺跡です。山内丸山遺跡は、2002年のサッカーワールドカップに向けて試合を誘致するための建設予定地に出土。県は建設を中止し、今では年間に100万人以上が訪れる観光地となっています。

高輪築堤の現状を報告する東海林氏=18日、港区

 山岸氏は、「遺跡を残す英断が後世のプラスになる」と主張。「世界遺産クラスの鉄道遺構を壊すことは、日本の恥になるだろう」と語りました。

5・6街区こそは全面保存を

 続いて、一般社団法人日本考古学協会理事・同埋蔵文化財保護対策委員会の馬淵和雄氏が、「高輪築堤問題と日本の文化財行政」をテーマに講演。「品川開発プロジェクト」により、高層ビルが4棟そびえ立つ予定の1~4街区に位置する高輪築堤は「絶望的な状況になるだろう」と推測。残り5・6街区に該当する品川駅寄り約500㍍のエリアは具体的な計画がなく、JR東日本は発掘調査を始めていません。「この部分は白紙状態。いま我々が目指すべきは、5・6街区の全面保存」と強調しました。

 現代の技術を駆使すれば遺跡保存と開発は共存できるとJR東日本に設計変更を求めるも、JR東日本は「それには約300億円かかる」と回答したといいます。「差額は国に要求すればよい。世界遺産に相当する遺跡であり、それだけの責任が国にもある」と力を込めました。

 今後の高輪一帯の街のあり方を考えたとき、「建物は寿命がある。100年、200年先の将来を見据えると、先祖の足跡を残し、日本の近代の礎を未来の人に感じてもらいたい」と語りました。

 遺跡については誰のものでもなく、祖先の足跡を誰かが独占することはできないとし、「遺跡は国民みんなのもの」と指摘。遺跡の保存と開発は私権の行使と公共の福祉のせめぎ合いであり、「国民的な議論が必要」と述べました。

 最後に、東京都歴史教育者協議会の東海林次男会長が、「高輪築堤最新の状況」を写真とともに報告。解体と埋め立てが進んでおり、築堤の基礎に使われたアカマツの杭が抜かれて山積みになり、石垣がはがされ、鉄道の面影などみじんも感じられない姿が明らかになりました。

 全面保存を求める会の岡田三郎助共同代表が閉会あいさつ。5・6街区こそ保存を実現するため、署名への協力を呼びかけました。

(東京民報2021年12月26日号より)

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