【書評】人間的な時間を取り戻す旅 『東京裏返し 社会学的街歩きガイド』吉見俊哉 著〈11月21日号より〉

 東京はこれまで3度占領されている、と著者は言う。関東の入り組んだ地形に徳川幕府が開削や埋め立てにより、近世都市江戸を築いたのが始め。2度目は「薩長政権によって江戸の時間層が全否定された」明治維新。3度目は占領軍により、さらに続く戦後の高度成長期「川筋を首都高速道路が蓋をした」と。

集英社 2020年 980円+税 よしみ・しゅんや 1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。社会学、都市論、メディア論、文化研究が専門

 しかし、過去の時間層の痕跡は抹消されていなかった。日本橋や聖橋までの幾つかの川筋や上野、本郷、湯島など、おもに「都心北部」を中心にその痕跡を訪ねる7日間の街歩きを始めた。なぜ都心北部か。「この地域は明治大正期まで東京の文化の中心だった。戦後の東京改造はこれらの地域を根本から変え、東京の文化的中心は南西の港、渋谷、新宿となり今も超高層化とともに進んでいる」。また、東京を「1964年の東京オリンピックが目指した、より速く、より高く、より強くという価値に呪縛された都市から、より愉しく、よりしなやかに、より末永く、という価値観が息づく都市にどう転換してゆくか」という課題を街歩きから考える試みであると。 

 7日間の行程は①荒川線に乗って東京を旅する②秋葉原?上野?浅草間に路面電車を復活させる③動物園を開放し、公園を夜のミュージアムパークにする④都市にメリハリをつけながら、古い街並みを守る⑤都心北部で大学街としての東京を再生させる⑥武蔵野台地東端で世界の多様な宗教が連帯する⑦未来都市東京を江戸にする。

 この街歩きは東京都心を緩やかな速度(スローモビリテイ)、長い歴史的時間の重層、(三つの占領の)異なる次元の時間の共存が体験できるように仕組まれており、さらには東京再生のための提案もなされている。それは「東京文化資源会議」というネットワーク組織で議論されてきたものであるという。

 トラム(路面電車)の復活というのも魅力的だ。山手線は地上、大江戸線は地下、第3の都心環状線はトラムで江戸線、なんて素敵です。

 また、東條英機の遺骨は粉砕されて米軍の航空機で太平洋に投棄されたのに、なぜお墓が雑司ヶ谷霊園に?など、歴史秘話も満載です。(なかしまのぶこ・元図書館員)

(東京民報2021年11月21日号より)

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