生活保護扶養照会 拒否したのに強行 杉並区 申し出書類受け取らず

 杉並区に生活保護の申請をした男性が、親族に援助が可能か問い合わせる「扶養照会」をしないよう求める書面を出そうとしたにもかかわらず、区が書面の受け取りを拒否し、さらに扶養照会を強行していたことが明らかになりました。

支援団体「尊厳損なう」

区への申し入れに区役所を訪れた、関係者、区議ら=4日、杉並区(つくろい東京ファンド提供)

 生活困窮者の支援に取り組む「つくろい東京ファンド」などの団体が4日、区を訪れて抗議・要請書を手渡しました。

つくろい東京ファンドが作成した、扶養照会を拒否する申出書

 生活保護を申請したのは、50歳代の男性。失職したことで生活に困り、2021年7月に杉並区の荻窪福祉事務所を申請のために訪ねました。

 男性は、つくろい東京ファンドが作成し、ホームページに公開している、「扶養照会を拒否するための申出書」を記入して持参しました。男性の両親は80歳代で持病を抱えており、きょうだいからも援助の見込みはなく、心配をかけたくなかったためです。

 扶養照会は、生活保護の申請者の親族などに、援助が可能かどうか、福祉事務所が問い合わせるもの。親族に知られることが、生活保護を利用する際の最大のハードルとなっており、生活困窮者
の支援団体などが、長年、見直しを求めてきました。

 日本共産党の国会質問への厚労相の答弁を受け、2021年3月に厚生労働省が通知を出し、申請者が拒否した場合は理由の聞き取りを行い、照会をしなくてよい場合にあたるか検討する方針が示されました。

 つくろい東京ファンドが作成した申出書は、この通知に基づき、扶養照会を拒否する旨を、理由を示して書面で提出できるようにしたものです。

男性残し部屋退出

 男性から相談を受けたつくろい東京ファンドによると、申出書は各地で活用され、扶養照会の手間が省けると、自治体側からも喜ばれています。ところが、杉並区の対応は、異例なものでした。

 男性が申出書を差し出すと、担当の相談係はとまどった表情を見せ、一度、相談室を出た後、しばらくして戻って来て「これは受け取れない」「持ち帰ってほしい」と伝えてきたといいます。

 男性が「厚労省からも通知が出ているでしょう」と受け取りを求めても、「受け取るわけにいかない」の一点張りでした。ついには、「これ以上、話をすることはない」「御用があったらお呼びください」と、男性と関係書類だけを残して相談室を出てしまいました。

 困った男性は、つくろい東京ファンドに電話したものの、その日は事務所にスタッフがいなかったため、相談することもできませんでした。困り果てて、「申出書は引っ込めます」と大きな声で叫ぶと、ようやく職員が戻り、申請の手続きが再開されました。

 その後も男性は、家庭訪問や支給日などの際に、扶養照会をしないよう口頭で求め続けました。しかし、区は2カ月後、扶養照会することになったと連絡してきて、11月ごろ、男性の両親に照会の郵便が送られました。両親は、白紙のまま通知を福祉事務所に送り返したといいます。

何重にも背く運用

 つくろい東京ファンドの稲葉剛代表理事は区の対応について、「扶養照会拒否の意思を示した書類の受け取りを拒否したこと、口頭で拒否の意志を示したのに照会を強行したことなど、国や都が示した運用方針に照らしても、何重も背いている」と批判します。

 生活保護問題対策全国会議とつくろい東京ファンドは4日、杉並区に対して、抗議・要請書を提出。日本共産党や立憲民主党の区議も同席しました。抗議・要請書は、「生活保護を利用したいなら、権利を主張するなと言わんばかりの対応は、区民の人権と尊厳を著しく損なうもので決して許されない」と抗議し、謝罪や、この間の扶養照会の対応の調査、検証を求めています。

動きに逆行あまりに冷酷 自由法曹団東京支部長  黒岩哲彦弁護士の話

 扶養照会は、困窮者を生活保護制度から遠ざける有害なものです。

黒岩哲彦弁護士

 2021年1月に共産党の小池晃参院議員が有害な扶養照会を止めるよう、国会で追及。3月に厚労省が、扶養照会は「『扶養義務の履行が期待できる』と判断される者に対して行う」と明記した通知を出しました。照会を拒んだ場合は「理由について丁寧に聞き取りを行う」としており、申請者の意向を尊重する旨の規定が追加されたことは、大きな変化です。

 杉並区の対応は、こうした動きにまったく逆行し、あまりに冷酷です。

 自由法曹団東京支部では、各自治体の「生活保護のしおり」を調査しています。

 港区では、21年3月に日本共産党区議が質疑したことがきっかけで、しおりが改訂されました。全文にルビが振られており、分かりやすい内容です。表紙に大きな文字で「憲法25条はあなたの生存権を保障しています」と書かれ、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですから、ためらわず相談してください」と記されています。

 コロナ禍で生活保護が大きな役割を持つなか、自治体にはこうした姿勢こそ、求められます。

〈東京民報2月20日号より〉

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