【書評】米軍支配の理不尽を告発 共同創作『ヘイタイのいる村』 鈴木実・高橋徳義・植松要作・笠原俊雄・槇仙一郎著

アメリカの占領統治下で、米軍の砲撃用演習地として土地を接収された山形県村山市戸沢地区の住民の悲惨な現実を描いた児童小説です。

 アメリカはアジア支配の為、アジアでの戦争を視野に入れ、自由に射撃訓練できる所を探し、戸沢地区など約4700ヘクタールを接収し、3カ所に砲座を設置した大高根射撃場を建設。昼夜を問わず砲撃を開始したのです。

北の風出版 2021年 2000円+税〈すずき・みのる〉〈たかはし・とくよし〉〈うえまつ・ようさく〉〈ささはら・としお〉〈まき・せんいちろう〉共同創作

 すでに戦争が終わったのに、弾道下の村―「ヘイタイのいる村」となってしまったのです。

 自然が豊かでのどかな戸沢村は一転して、山、野原、家々、人々の上を砲弾が飛び交い、炭焼き小屋、民家、田畑を襲い、住民が不発弾で爆死するという危険な地域に変貌しました。そのリアルな姿を子どもの目・耳・心で描きだしています。

 この小説は、1958年、地元の青年5人による共同創作として、山形県の地方紙である中奥日報(現・山形新聞)に連載されたものです。

 そのスクラップが昨年63年ぶりに発見され、この戦後直後の米軍による「民族的屈辱の歴史」を「風化してはならない」と、山形童話の会が中心となり、刊行会を立ち上げ、出版されました。

 児童小説ですが、大人でも読みごたえがある心に迫る作品です。

 登場する一人ひとりの子どもたちは性格も多様で喧嘩もしますが、銃弾が飛び交う生活の中で、その理不尽に気が付きます。

 子どもたちで毎年行っていた「ミテシレ会」(「見て、知れ」とのことで、劇や踊り・歌、絵などの作品を発表する会)が、米軍の砲弾練習のために中止しなくてはならない事態となり、団結していきます。

 沖縄の辺野古米軍新基地建設反対闘争や横田基地問題の重要性を深く認識させてくれる著作です。この小説を原作とした児童文学『山が泣いてる』は1961年に第一回日本児童文学者協会賞を受賞しています。

 連絡はあすなろ書店神町店0237(47)0099まで。(柏木新・話芸史研究家)

(東京民報2021年12月19日号より)

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