【生活保護の現場から】自立を制度が支える 難病で骨折、虐待を受け〈2022年4月17日号〉

 都内市部に住む沢田ゆかりさん(仮名=53歳)は生まれた時から難病を患っており、障害を負っています。自立した生活を送るために生活保護を利用しています。セーフティネットが支える人生を沢田さんに聞きました。

骨折を防ぐため自宅でも車イスで暮らす沢田さん

 沢田さんは生まれつき骨形成不全症(ことば)を患い、出産時に3カ所骨折していました。1歳まで祖父母の家に預けられていて、おむつ交換時に持ち上げられた足が骨折し病院に入院。退院を契機に両親の元に戻りました。幼少時だけでなく大人になってからも入院を複数回経験しています。骨の脆さに起因する骨折を防ぐために車いすを用いての生活。現在は重度訪問介護のホームヘルパー派遣などを活用して暮らしています。

 先日は自宅でトイレの便座から落ち骨折してしまいました。沢田さんは「体力が落ちたからかな」

と話します。これまで骨折した回数は両手でも数えきれないほど。小学生時、消しゴムをとろうとして鎖骨を骨折したこともあり、「しゃっくりで肋骨を骨折する子もいた」と言います。閉経後に骨粗鬆症のリスクが高まるために、「これからの生活はより慎重にならざるを得ない」と語ります。

 沢田さんは以前はよく電動車いすに乗り出かけていました。しかし、「さぁ、行こう」と簡単に言える状況ではなく、自身でボランティアを探して依頼をするなど準備を重ねてから出かけなくてはいけませんでした。自ら駅でチラシをまいたこともありました。今は、重度訪問介護が担っています。

お腹空きトマトを

 一番幼い時の記憶は2歳頃のことで、窓際のベビーベッドの上です。哺乳瓶に牛乳を入れ、レーズンビスケットを1袋置いて父親は仕事に出かけ、母親は昼間で寝ていて午後になると外出。おむつを替えてもらえず気持ち悪くて外し、お腹が空き窓の外に実るトマトに手を伸ばしたと話します。「今でいうネグレクト(育児放棄)だったんでしょうね。その頃の記憶で腐った牛乳の味が思い出されて、牛乳が飲めなくなった」と語ります。

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