日本の社会問題や政治への疑問を正面から捉え、映像として記録する映画監督の西原孝至氏が、5作目に選んだテーマは日本共産党。7月15日に創立百年を迎える日本共産党を昨年から約1年間追い続けたドキュメンタリー映画「百年と希望」が完成し、6月18日から渋谷ユーロスペースほか、全国で順次公開されます。党の外部から客観的視点で見た日本共産党の姿や撮影を通じて感じたこと、作品について伺いました。
ー前回は本作の撮影中にインタビューをお願いしました。映画が完成し、客観的に見た共産党の印象はどうでしたか。

私利私欲なく、社会や政治をよくしたいと思っている人が多いと率直に感じました。昨年の衆院選で、政権交代が実現した場合、共産党は限定的な閣外協力で連携する立場を取りました。あくまで外から応援すると。なぜなら、政治や社会の改善が最優先だから。この姿勢はまさに日本共産党を表していると思います。
真面目が揶揄されがちな時代だからこそ、共産党の誠実さは大切にしてほしい一方で、残念ながら清廉潔白なだけでは勝てないのが政治の世界。与党の良い意味での図太さみたいなものも持ってほしい。もっと柔軟に、したたかに、しなやかに変わっていく必要があると感じます。共産党が躍進しなければ、困るのは市民ですから。
ータイトルはどの段階でひらめたのでしょうか。
年明けくらいですかね。撮影を重ね、編集していく中で、耳に残ったのが登場人物の言葉に出てくる「希望」という単語。とりわけ若い人が社会に対して希望を持てない状況が続いていることもあり、タイトルにしました。
ー作品自体は党の百年を強調しすぎない構成です。
あくまで通過点としての百年目だと思っています。通過点として、現在を切り取るかたちの映画にしたかった。共産党の資料映像や歴史をひも解く作品にすることもできたと思うのですが、僕は党の歴史より、党で活動している人たちに興味があります。
百年後の時代に生きている人が、百年前の共産党はこうだったのかと見てもらえたらいいな。






映画「百年と希望」© ML9
ーナレーションはなくしたのですね。
最初、ナレーションをつけたバージョンもつくったのですが、話している人の言葉や思いをしっかりと聞き、受け取ってほしいので、映像で伝わるだろうという判断で基本的な情報を明示するだけにしました。
ーインタビューで西原監督も聞き役で登場します。
撮影される側と撮影する側の関係性が、僕はドキュメンタリーだと思っています。あくまでドキュメンタリーの作り手のひとりが共産党を見たという形を崩したくなかったですし、映画を見ている人と一緒に、共産党を知っていくようなイメージにしたかった。そこで、話を聞いている自分を映像に入れました。