
浅草育ちの私は、初詣、節分、初午、桃の節句、花祭り、端午の節句と、月ごと行われる年中行事で、四季を過ごしてきた。
さて、今度は三社祭だというと、もう心が騒ぐのだった。年の前半の締め括りは、5月15日からの三社祭(17日まで)と各町の夏祭り。6月にかけ、浅草周辺は、毎週どこかで神輿が出て、町は祭り一色になる。
心浮き立つのは、威勢のいい神輿ばかりではない。まちのどこにいても、どこからか、太鼓の音や笛の音が聞こえ、表の縁台で酒を酌み交わし、子どもが走り回り、ご近所同士の親しげな笑い声が聞こえてくる。ここは下町。夏の到来だ。
写真・文 夏目安男
〈東京民報 2015年5月17日号より〉
※WEB版追記 写真家の夏目安男さんは2021年12月に亡くなりました。ご遺族の許可を得て、東京民報での連載「わがまち東京」をWeb版連載として掲載します