【コラム砂時計】「茶飲み話」で済まされない〈5月15日号より〉

 

新緑がまぶしいこの季節は、新茶の旬の時季でもある。全国の生産高では静岡、鹿児島の両県が群を抜いているが、関東地方のお茶のブランドとして知られているのが「狭山茶」である。主産地は埼玉・入間市で、隣接する武蔵村山、東大和両市、瑞穂町で収穫されるお茶もまた「東京狭山茶」として親しまれてきた。

 その昔、鎌倉時代に栄西(ようさい)という僧が著した『喫茶養生記』にも「茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり」と記され、現代では、茶葉にお湯を注いで飲むお茶には、健康にいいとされるポリフェノールやカテキンが多く含まれていることが証明されている。

 「ジャパニーズ・ティー」の人気は海外でも上昇、アメリカのコーヒー・チェーン店などでも茶葉や抹茶が販売され、フランス・パリでは日本食のイベント会場に「日本茶ブース」が特設されるほどだ。

 4月7日に開かれた参院農林水産委員会で、日本共産党の紙智子議員が日本茶の問題を取り上げた。農水省によると、輸出量はこの10年間で4倍を超え、金額ともに過去最高を記録している半面、生産者も生産量も下降の一途をたどっている。2019年の天候不順による減産に加え、コロナ禍の下、大幅な生産自粛で2020年、21年と2年連続で生産量が減った。生産農家も2000年当時5万戸あったのが、1万戸台まで落ち込んでいる。

 お茶の国内消費量の直近10年間の傾向は、大手飲料メーカーが販売するペットボトル等の緑茶飲料は3割以上増加しているものの、急須で淹れる「リーフ茶」の需要は2割減少した。

 茶業農家の高齢化、深刻な担い手不足を解消していくには、農業に関心のある若い世代に公的な援助をして、生産に携わってもらうような政策も必要だろう。八十八夜を目前にした日、ほど近い茶畑にパワーショベルが入り、宅地と化すのを目の当たりにして、「茶飲み話」で済まされないと思った。

(ジャーナリスト・阿部芳郎)

(東京民報2022年5月15日号より)

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