旧江戸城外桜田門から内堀・櫻田堀にそって三宅坂をゆるやかに上っていくと、国会議事堂が見えてきます。
白亜の殿堂と呼ばれる議事堂の外壁は国内産の御影石(花崗岩)で装飾されており、2階以上に使われている「桜みかげ」と呼ばれる倉橋島産(広島県)の尾立石はほんのりとした桜色の色合いの肌が特徴で美しい装いを見せてくれます。
議事堂の建設計画がはじめられたのが1886年。完成は1936年ですから、なんと建設に50年を要したことになります。その議事堂の建設にあたっては使用する石材すべてを国内産にすることが決められ、全国の石の産地の調査がおこなわれました。その結果、外まわり石材は3種の御影石、内装材に使われた大理石は37種に及び、「石材の博物館」と呼ばれました。
そのなかでただ一つ「黄龍」と言う朝鮮産の大理石がありましたが、戦前の植民地支配のもとで国内産として扱われました。
今日、国会は憲法によって「国権の最高機関」「国の唯一の立法機関」と定められていますが、議事堂が建設された明治憲法下では「天皇の立法権行使に対する協賛機関」であり、天皇制のもとでの一機関に過ぎなかったのです。
国会議事堂の石材と議事堂建設に関わる出来事について詳しく紹介されている「議事堂の石」(新日本出版社)のなかで、元日本共産党衆議院議員の工藤晃さんは、議事堂が竣工した1936年について、「日中戦争の前夜であり、二・二六事件が起き、日独伊防共協定が調印された。メーデーが禁止された」と指摘されています。「国権の最高機関」としての今日の国会には憲法と平和を守る責務が課せられています。
国会前庭
議事堂の前に国会前庭があります。南庭は池や滝、東屋などが配された回遊式庭園。北庭には憲政記念館(現在リニューアル工事中)があり、庭園には憲政記念館の前身、尾崎記念会館建設を記念して建てられた三権分立を象徴する三面塔星型の時計塔がそびえています。
また、全国の土地の標高を決める基準となる「日本水準原点」があり、「日本水準原点標庫」とともに国の重要文化財に指定されています。