高輪築堤 遺跡と開発の共存こそ 考古学協会 保存と活用考えるシンポ〈2022年5月15日号〉

 JR東日本が進める高輪ゲートウェイ駅西側(港区)の大規模な再開発に伴う発掘調査で見つかった日本最初の鉄道遺構「高輪築堤」の保存と活用を考えるシンポジウムが4月16日、オンラインで開かれました。考古学協会の全国組織、日本考古学協会が主催しました。

 高輪築堤は1872(明治5)年の鉄道開業時、海上に線路を敷設するために築かれた構造物。2019年の品川駅改良時に石垣の一部が発見され、現在までにJR田町駅~品川駅間1.3キロにわたり、極めて良好な状態で確認されています。

 発掘調査で出土した約800メートルのうち、昨年9月に国史跡に指定された計120メートルは現地保存、信号機土台部を含む約30メートルは移築保存が決定。すでに約680メートルはほぼ解体されており、JR東日本が具体的な計画を示していない残り約500メートルの未発掘部分について、日本考古学協会などの関連学会が築堤の価値と重要性を国や自治体、事業者にアピールし、保存と活用を求めています。

国史跡に指定された部分。美しい石積みが確認できる= 21 年2月、港区

 シンポジウムでは、日本考古学協会の辻秀人会長が開会あいさつ。「改めて高輪築堤の重要性を確認し、保存に向けて考えてほしい」と、参加者に訴えました。

 日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会の藤澤敦委員長が趣旨説明を行い、「一部が保存された以外、永遠に姿を消した」と非難。「知恵や技術を結集し、遺跡を保存しながら新たな街づくりに生かす方法を探りたい」と話しました。

 JR東日本が設置した「高輪築堤調査・保存等検討委員会」の委員長を務める早稲田大学の谷川章雄教授が基調講演。錦絵にも描かれている明治時代の風景、文明開化の象徴がそのままの様相で鉄道遺構らしい連続性を備えて残っており、「日本の近代史、鉄道史、土木史、産業史上において非常に重要な位置を占める」と強調。東京の近世から近代の地域史を考える上でも貴重な遺跡であることを論じました。

 パネルディスカッションで、同検討委員会の委員・鉄道史学会の老川慶喜氏は、市街地を避けて海上に鉄道を敷いた経緯を解説。品川駅につながる残存部分の調査が、海上築堤の構造を知る上で重要になると述べました。

 鉄道建設が社会経済史に及ぼした影響も紹介。中央集権的な国家建設の成立や対外貿易の発展、初詣の行事が生まれるなど、生活の変容を説明しました。

 日本イコモス国内委員会・産業考古学会元会長の伊藤孝氏は、今年1月28日に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に関わる諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」の本部(パリ)が、高輪築堤の破壊中止を求める「ヘリテージ・アラート(遺産危機警告)」を日本に初めて発出した意義を説明。築堤が取り返しのつかない危機に直面していることを、世界に広く周知させることが目的であり、築堤の解体は「国内外において最も遺憾な前例。将来に大きな禍根を残す」と強調しました。

 発言者らは残存部分の現地保存を訴えるとともに、都市開発と文化財の共存や調和の必要性についても議論を深めました。

〈東京民報2022年5月15日号より〉

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