街角の小さな旅22 世界の演劇・映像 百万点に及ぶ資料 演劇博物館と早稲田界隈
- 2022/6/1
- 街角の小さな旅
ベルが鳴り、照明が落とされ、ざわめきが去り、なにかが始まる
演劇は古代のギリシャ詩劇、中世のシェークスピア劇、近現代のリアリズム劇、そして日本では伝統芸能としての歌舞伎など、ときどきに姿を変えながらその営みをつづけてきました。
“エンパク”の呼称で親しまれている早稲田大学坪内博士記念演劇博物館(以下、演劇博物館)は、早稲田大学のキャンパス(新宿区)にあり、ドイツのミュンヘン演劇博物館、オーストリアの国立演劇博物館、イギリスの演劇博物館、ロシアのバフルーシン記念国立演劇博物館などと肩を並べる演劇専門総合博物館です。
演劇博物館は今からほぼ100年前、日本の近代化の過程で小説や劇作などに足跡を残した坪内逍遙の「シェークスピヤ全集」全40巻の翻訳の完成と古稀の祝いを記念して設立されたものです。逍遙は博物館の開館にあたって「よき演劇をつくり出すには、内外古今の劇に関する資料を蒐集し、整理し、これを比較研究することによって基礎をつくる必要がある」と語っています。
博物館の建物は16世紀エリザベス朝時代のイギリスの劇場「フォーチュン座」を模した木造建築で、正面に舞台となる張り出しがあり、その舞台を囲むよう両翼に桟敷席、公演時には観客席となる広場が舞台の前に置かれています。建物自体が劇場資料となっており、木のぬくもりのなかで鑑賞できます。
収蔵品は日本国内にとどまらず世界の演劇・映像などの資料、錦絵、舞台写真、台本、チラシ・プログラム、衣装・人形・書簡・原稿など100万点にも及び、古代・中世、近世・近代、現代などの歴史区分にそった展示室、「逍遙記念室」などの常設展示があり、演劇に関わる各種のイベントや企画展も開催されています。8月7日まで「2022年新収蔵品展」と「奇才の浄瑠璃作者・近松半二」の企画展。図書や視聴覚資料の閲覧・視聴も出来ます。
会津八一博物館
演劇博物館を出て正門に向かって進むと正面に国重要文化財指定の大隈講堂。その手前右側に早稲田大学で教壇に立ち、書家、歌人、美術史家として知られた「会津八一記念博物館」があります。
収蔵品は会津八一自身が蒐集した東洋の古美術を核に門人たちが集めた資料、大田区山王にあった旧富岡美術館の900点に及ぶ美術品などの東洋陶磁、考古・民族資料、日本の近世・近現代絵画など。横山大観・下村観山合作の日本画「明暗」、荻原碌山の彫刻「女」が展示されています。