府中市発注の公共工事で入札の最低制限価格を漏えいしたとして当時の市議や市職員、関連業者の役員が2020年12月に有罪判決を受けた官製談合・贈収賄事件をめぐり、住民監査請求にともなう住民側と対象部署職員の陳述が5月19日、府中市役所の監査室で開かれました。
監査委の客観性に疑問も
住民監査請求は今年4月13日、住民団体「府中市官製談合を追及する市民の会」と市民らが提出。市に対し、有罪判決を受けた6人と高野律雄市長に損害賠償を求めるとともに、違法工事2件の前後に行われた関連工事における不正行為の有無の調査と、事実の明確化を求めています。
監査委員に向けた住民側の陳述では、同会の甲田直己、村山正之の両共同代表、丹野和雄氏の3人が発言。4月13日に提出した住民監査請求書の請求項目を補足しました。
甲田氏は刑事裁判が終了した「四谷さくら公園2期工事」(最低制限価格9円差で落札)と「浅間町道路工事」(0円差で落札)について、「府中市は入札妨害という民事上の損害を受けている。刑事上の責任追及とは別に、市として全員に損害賠償を請求すべき」と訴え。違法工事を認識していたにも関わらず、事実上、談合を追認している高野市長にも「損害賠償を求めるべき」と、労働災害の場合などでも刑事責任、行政責任、民事責任、社会的責任の4点が追及されることを根拠に主張しました。
損害賠償の金額は府中市の官製談合再発防止対策にのっとり、契約金額の30%と付記してはいるものの、「金額の多寡によって判断が左右されるものではない」と強調。談合事件に関連する2件の工事に関しては新証拠や補足説明を交え、市が独自調査を放棄しているとして厳正な監査を求めました。
繰り返し問う財産的損害の有無
村山氏は府中市の官製談合再発防止対策について「具体性に不明な点がある」とし、「実施内容や効果があいまい」と指摘。検討中の内容もあり、追加対策が進んでいない現状に「再発防止策の具体的な検討が停滞しているのでは」と疑問を呈しました。
公判で被告人の市職員が、他の市議にも情報を漏えいした旨を供述したものの、市の調査が及んでいない点について「市の責任が見えず、市民として納得のいくものではない」と述べました。
丹野氏は20年1月の市長選挙にふれ、高野市長が事件を認識していたにも関わらず、のちに有罪判決を受ける元市議を自らの選挙対策本部長に据えた責任に言及。「市長選の有効性も問われる」と強調し、「市政や市議会がすべての市民のために機能することが求められる」と、監査の必要性を訴えました。
陳述を聞いた監査委員は「談合行為により府中市は財産的損害を受けているか」と、住民側に繰り返し質問。「談合に関わる事実を具体的に証明するものはないのか」と住民側に問いかける場面もたびたび見られました。
職員側の陳述は、都市整備部長をはじめ、公園緑地課、道路課、総務管理部契約課の各課長と課長補佐らが出席。新証拠の提出や陳述はなく、監査委員に府中市への財産的損失の有無を問われると、職員側は「市としての損害はない」と答えました。
後日、取材に対して甲田氏は「監査は事実問題を客観的に調べる役割と期待した部分がありましたが、監査委員は市役所を守るような姿勢だった」と指摘。「昨年来、弁護士と相談し、必死になって情報開示をやった。できる限りの証拠は示したが、不正な公金支出をすべて市民に証明しろと言うのか」と釈然としない思いを語りながらも「事実を明らかにしなければ、市の体質は変わらない」と力を込めました。
現在、代理人弁護士が裁判資料の開示を請求中。6月10日ごろに通知される監査の結果を受け、今後の対応を検討するとしています。

〈東京民報2022年6月5日号より〉