【コラム砂時計】年金削る国、増やす国〈6月12日号より〉
- 2022/6/7
- コラム・オピニオン
日本年金機構のホームページにこんな無粋な「お知らせ」が掲載された。「令和4年4月分(6月15日支払い分)からの年金額は法律の規定により原則0・4%の引き下げとなります」。
具体的には、国民年金は6万5075円から6万4816円へ、厚生年金(夫婦2人)は22万0496円から21万9593円へ、それぞれ259円、903円削減される。
ロシアのウクライナ侵攻の影響で小麦や原油が高騰、円安も加わって生活必需品の値上げが相次いでいる。そんななか、今月半ばに払い込まれる年金の減額は腹立たしい限りである。
5月27日の衆院予算委員会で日本共産党の宮本徹議員が最低賃金引き上げと、年金支給額引き下げ中止を岸田首相に求めた。しかし、首相答弁は「のれんに腕押し」(宮本氏)で、やる気のなさだけが浮き彫りになった。
年金の問題は司法でも「政府寄り」の判断が続いている。「年金給付の減額処分は、憲法が定める生存権の侵害に当たる」とした集団訴訟は、全国の39地裁で提起されているが、直近の広島地裁判決(5月11日)を含め、原告側の主張はことごとく退けられている。
「年金法の改正(2012年)は世代間の公平や公的年金制度に対する信頼確保のために必要な措置」という判決は「法の番人」がするものとは言い難い。
海外に目を向けると同じように燃料や食料品が値上がりしているドイツで、7月1日から年金支給額がアップされると報道された。
連邦議会で年金調整法が可決された結果、約2100万人が対象の年金受給額が西ドイツ地区で約5・35%、東ドイツ地区で約6・12%増える見込みだという。政府関係者は、賃金が上昇し、失業率が改善されたことを年金生活者の将来に反映させることが重要だと述べている。
関連して、日本の最低賃金が全国加重平均で930円であるにの対し、ドイツは10月から12ユーロ(約1683円)に引き上げる。収入の底上げこそが肝要だという一つの証明といえそうだ。
(ジャーナリスト・阿部芳郎)
(東京民報2022年6月12日号より)