脳ドックの結果をきっかけに乗務禁止とされたことで精神疾患を発症したとして5月25日、京王電鉄バス(本社:府中市)の男性運転士(63歳)が新宿労働基準監督署に労災の申請をしたとの記者会見が開かれました。支援する京王新労働組合と弁護団らが参加し、担当上司によるパワーハラスメント(パワハラ)の実態を赤裸々に語りました。
運転士は2021年4月に会社の指示により脳ドックを受診。結果に異常の疑いの所見があるとして、同月中に京王電鉄診療所にて「乗務不能診断」を受け自宅待機になりました。5月に再検査のため脳神経外科でCT検査を受け「乗務可能」との診断があり、CT検査画像が京王電鉄診療所に送付されました。これを受け運転士は6月に「乗務可能」と記載された診断書を会社に提出しました。
しかし、営業所長からは「妻と一緒に会社に来るように」との呼び出しを受けたと言います。所長は「煙草をやめるか会社を辞めるか決めろ」と詰問し、運転士は「煙草をやめる」と回答。本人だけではなく、妻の煙草とライターまでその場に置いていくよう指示し従わせました。
後日、同社永福営業所にて会社の用意したひな形で「喫煙所に近寄らない」「(不規則な勤務体制なのに)3度の食事を規則正しくとる」などの"行動計画書"を書くよう終日に渡り強要されました。

京王電鉄診療所の産業医から「会社から連絡があるので仕事に復帰するよう」告げられ、別の日に上司が家庭訪問し、「乗務に戻す」と怒ったように言いました。運転士はそれをきっかけに出勤が出来なくなり、うつ病と診断されました。
診断後の7月、会社側は「辞めさせる気はない」と告げたものの、病休中の今年4月、妻に5月15日付での雇止めを宣言。同社は運転士の休業補償給付金申請に対し、傷病の証明を拒否しています。
反省文の強要、「小学生」と罵倒
弁護団は「密室で終日、行動計画書なる反省文に近いものを、書き続けさせるのは明らかなパワハラ行為。産業医が乗務可能としたのに、会社の対応が異常だ」と批判。また、労組の佐々木仁委員長は「いまどき、あり得ないことと思われるでしょうが、他の事例も聞いている。雇止めはすべきではないとの組合の進言は聞き入れられなかった」と語ります。また、同社が運転士に禁煙を迫ったにもかかわらず、禁煙外来の受診案内などは全くなく、禁煙啓蒙も積極的ではなかったといいます。