「最高裁は被害者に向き合え」原発訴訟 国の責任認めぬ判決〈2022年6月26日号〉
- 2022/6/27
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東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難を余儀なくされた住民らが国と東京電力(東電)に対して損害賠償を求めた4件の集団訴訟で、最高裁判所第2小法廷(菅野博之裁判長)は17日、国の責任を認めない判決を言い渡しました。福島原発事故をめぐる約30件(原告約1万2000人)の同種訴訟で、最高裁が判断を示すのは初となります。
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判決を下されたのは、「生業(なりわい)を返せ!地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)、千葉訴訟、群馬訴訟、愛媛訴訟で、原告は計約3700人。いずれの訴訟も最高裁決定で東電の賠償責任は確定しているものの、国の責任については高裁判決で生業、千葉、愛媛訴訟は認められましたが、群馬訴訟は否定され、判断が割れていました。
今回の裁判における主な争点は、文部科学省の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測「長期評価」において、①国は震災前に巨大津波の襲来が予見できたか②予見できた場合、事故を回避できたか―の2点でした。
最高裁は判決で①についての判断は避けています。②については「発生した地震と津波の規模が想定よりはるかに大きかった」として、「長期評価を前提に国が規制権限を行使して津波対策を東電に義務付けたとしても、事故が発生する可能性が相当にある」と、審理すべき重要な前段を飛ばして結論付けました。
裁判官4人のうち、三浦守裁判官は「原子炉施設の安全性が確保されないときは、数多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼすなど、深刻な事態を生ずることが明らか。国がその義務の適切な履行を確保するため必要な規制を行うことは当然である」と多数意見を批判。判決文54ページの中で約30ページにわたり、反対意見を付けています。
仮定を重ねた判決
法廷から出てきた生業訴訟弁護団の馬奈木厳太郎弁護士は「判決はまったく受け入れがたい内容」と強調。「結論を導くための判断の過程が、まったく被害者に向き合っていない」と強く批判しました。