
御嶽駅を降りると渓谷からひんやりした緑の風が、森の匂いを運んでくる。
駅前は、バスに乗って御岳山に向かう人、渓谷の散策やボルダリングに向かう人で溢れている。御岳橋から見下ろすと、多摩川清流の渓谷美に圧倒される。切り立った渓谷の斜面に杉林が続き流れは急。岩にあたった波が割れ、白く輝いている。対岸に、日本画の巨匠、川合玉堂の玉堂美術館も見える。河原からバーベキューのいい匂いがしてきた。渓谷の散策路には、喫茶や獲りたての野菜の置かれた無人スタンドもある。
目の前の急流を、ラフティングのボートがアッという間に下って行った。
写真・文 夏目安男
〈東京民報 2015年8月9,16日号より〉
※WEB版追記 写真家の夏目安男さんは2021年12月に亡くなりました。ご遺族の許可を得て、東京民報での連載「わがまち東京」をWeb版連載として掲載します