東京外環道の大深度地下トンネル工事は、調布市東つつじヶ丘での地表陥没や巨大地下空洞の発生だけでなく、低周波音・振動や広範囲に渡る建物損傷などの被害をもたらしていることが研究者と被害住民による調査によって、より詳細に明らかになりました。NPO法人市民科学研究室の上田昌文代表と被害者らによる外環振動・低周波音調査会は7月23日、調査の中間報告会を実施しました。
調査は今年3月24日~6月28日にかけて、調布市若葉町1丁目、東つつじヶ丘2・3丁目の177軒を延べ約150時間かけて目視した他、Google Street Viewの過去写真との照合や可能の場合は聞き取り、従前写真との比較をしました。
これまで国土交通省とNEXCO東日本は「被害はトンネル直上のみだ」と強弁。その一方で「工事で迷惑をかけた」として、工事で発生したと思われる家屋などの損壊と工事前から発生していたと思われる経年劣化とを検証せずに個別に表面の隙間を埋める補修工事などで対応を進めており、補修の範囲や工事の影響はあいまいなままに終わらせようとしています。
しかし、住民は「地表に何ら影響ない」として進められたシールドマシンの掘進工事に伴い、長期にわたる振動や低周波音による体調不良を始め、ブロック塀のヒビや地表と住宅の基礎の段差の出現、床の傾きなどを指摘してきました。
今回の調査では2カ月近くに渡り低周波振動が続いたことの他、直上エリアを中心に工事の影響での損壊と疑いがあることがわかっています。
さらに▽工事前になかった損傷が工事後に発生した事例は25件▽工事によると疑われる、地面の沈下・隆起が36事例(ともに対象エリア)―としており、ルート外でも地表への影響が出ている個所もあるとして、調査範囲の拡大の必要を関係者は語ります。
参加した当該地域の住民の女性は「直上だけと事業者は言うけれど、ほかの地域にも被害はある。自分の家の真下で何が起きているのかわからなくて心底、不気味です。今後、住み続けられるのか。きちんとした検証もなく工事を無理に進めようとする姿勢は改めて、住民に真摯に向き合って欲しい」と訴えています。調査会も「住民に正しい情報を出すべきだ」と強調しています。
〈東京民報2022年8月7日・14日合併号より〉