【書評】奇跡が生んだ「明治神宮の森 『100さいの森』松岡達英 著/伊藤弥寿彦 監修

 「どうしてこんなに大きな森が東京の真ん中にあるの?」「この森は人の手でつくりあげたんだよ」「そんなことできるの?」―ヤマガラたちがそんなおしゃべりをしながら飛んでいると100歳を超えるスダジイの木が「わたしは100年前まだ子どもの木だった。ここに森を作ることになって、わたしは荷車で運ばれてきた。全国各地からいろいろな種類の木が運ばれてきた。そして一本一本植えられた。たいへんな仕事だったよ」と語りはじめました。

 成長の早い広葉樹が大きくなると、日が当たらなくなった針葉樹は次々と倒れていき、そこに日当たりのいい空間ができ、やがて広葉樹の幼木が育つ。倒れた木々は森の栄養となる。根本の落ち葉やカブトムシ、ダンゴムシやキノコたち、すべてが木々たちの栄養になる。「ぞっとすることもあった。人間たちの始めた戦争で火の海になった。でもこの森は燃えなかった。森が作られて100年、これからもっと1000年も続くといいね」

 この絵本は今まさに再開発の危機にある「神宮の森」の物語です。明治45年(1912年)、明治天皇が死去されると人々の声にも押され、天皇を祭神とする神社を創建することになり、神社といえば「鎮守の森」が欠かせません。

講談社 2020年 2200円(税込) まつおか・たつひで 1944年新潟県長岡市生まれ。世界各地を自然観察し、絵本から科学絵本、図鑑、ノンフィクションまで多数の著書を出版

 3人の学者たち(本多静六とその弟子・本郷高徳、上原敬二)が目指したのは、人が手をかけずとも延々と世代をつなげていく森、太古の原生林でした。そのためには膨大な木々が必要で、国民に寄付を募ると10万本もの樹木が集まり、さらに植樹作業に関わりたいと全国から11万人もの青年団が集結、6年の歳月をかけて完成しました。

 そして100年の歳月が流れ「記念事業」として2020年、森の生き物全般にわたる科学調査も行われ、約3000種の生物が記録されたということです。森は3人の学者たちの予想どおり太古の森に近い姿になっていたのでした。

 日本中から集められた10万本の樹木、11万人の協力者。さらに100年後の調査。「こんなことができる場所は世界中どこにもありません」とは監修者、伊藤弥寿彦氏の言葉です。

(なかしまのぶこ 元図書館員)

(東京民報2022年5月22日号より)

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