9条は人として生きる指針 外国に碑、すごいと確信 ジャーナリスト 伊藤 千尋 さん(2022年8月28日号)

月15日、77回目の終戦の日を迎えました。悲惨な戦争を二度と繰り返さないとの誓いを込めてつくられた憲法9条。ところが今、ウクライナ危機を口実に改悪の動きが加速します。こうした中、足立区の「千住9条の会」を中心にした会が、9条の大切さを広く知ってほしいと「九条の碑」を6月、東京で初めて建立し、注目されました。全国23カ所の「9条の碑」を巡り、一冊の本にまとめたジャーナリストの伊藤千尋さん(72)に、同書に込めた思いを聞きました。

いとう・ちひろ ジャーナリスト。1949年、山口県生まれ。東京大学法学部卒業。朝日新聞記者として40年にわたり主に国際報道の分野で取材。現在、フリーのジャーナリストとして取材、執筆、講演活動を行っている。「コスタリカ平和の会」共同代表、「九条の会」世話人。著書に『活憲の時代』(シネフロント社)、『9条を活かす日本』(新日本出版)など多数

 ―「9条の碑」を巡ろうと思われたきっかけを教えてください。

 私が「9条の碑」を最初に見たのは、実は日本国内ではなくて、アフリカ沖のカナリア諸島(スペイン領)という島でした。16年前(2006年)のことです。最初に碑のことを聞いた時は、「何かの間違いでは」と思いました。でもジャーナリストというのは自分の目で見たものを信じるわけですから、とりあえず行ってみようと。

 そうしたら本当にあった。その時しみじみ思ったのは、アフリカ沖のスペイン領の島で、そこの人々が自分たちで考えて、よその国の憲法の記念碑をつくろうと自分たちの税金で、市も土地を提供してつくった。自分の国にもこういう憲法が欲しいし、世界中にこういう憲法があったら世界が平和になるという、その見本だと思うから9条の碑を建てたわけです。

 9条は世界の人々がいいなと思えるものだと直感しました。日本国憲法はすごいなとは思っていたけれども、よその国に行って、それが記念碑になっているのを見て、そう確信しました。

 それから3年後、沖縄の基地の取材に仕事で行った読谷村よみたんそんの役場を訪ねてみたら、入り口に憲法9条の記念碑がありました。日本にもあることを初めて知りました。調べ始めたら、あちこちにあった。9条への思いを形にした碑が、日本国内のあちこちにあると思うと、うれしくなって取材を進めました。いつのまにか20カ所を超えていました。

個性つくる歴史と風土

 ―本にする際、苦心されたことはありますか。

 最初は図鑑みたいなものを考えていました。でも、それではつまらないじゃないですか。どういう思いで建てたのかと聞いていると、それをつくった風土が背景にあることに気がつきました。建てた人が生まれ育った土地の風土とか歴史とか、それが関係しているのではないか。そういうことも入れ始めたら面白くなりました。

 参考になったのが、映画「男はつらいよ フーテンの寅」です。日本各地に寅さんが旅をして、各地の名所を紹介するような格好にもなっていますね。そこが面白いわけですよ。そうしてみると、「9条の碑」にも、地方ごとの特色が見えてきました。

 石の種類や形、そこに何を彫っているか、みんな違う。個性がある。地域の人が寄り集まって、どんなものにしようかと考えてつくるから、個性的なものができる。地域の文化を見るような思いがあります。

 ―碑を建立する運動を、どうみていますか。

 「9条の碑」をつくる運動は日本の市民運動の歴史においても、すごいことだと思っています。「自分の墓はいらないから、碑をつくろう」と、そこまで決心して建てる人もいる。周りを巻き込んでつくる人もいます。アイデアを出して、それを実行して、それもかなりの金額がかさんでも実現してしまう。それが一つや二つではなく、たくさんあるわけです。

 市民運動がすごいレベルに達したものだと私は思っています。他の分野での市民運動を進める契機として、記念碑をつくる運動が大いに役立っています。

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