【書評】新資料で真実の姿を描く 『生誕一三〇年・没後九五年 時代を拓く芥川龍之介』関口安義 著

 芥川龍之介は、「羅生門」など教科書にも登場しており、日本だけでなく海外でもよく知られた作家です。今年2022年は、生誕130年、没後95年になります。

 本書は、その芥川研究の第一人者の著者が、近年発見された友人の日記、書簡などの新資料にもとづき、変遷する芥川の姿を見事に描き出しています。

新日本出版社 2022年 1870円(税込) せきぐち・やすよし 1935年埼玉県生まれ。都留文科大学名誉教授、文学博士。芥川龍之介関係の研究書多数

 芥川というと、これまで「孤独で陰鬱な作家、政治や社会に無関心」な作家というイメージがありましたが、新資料の発見は、それを否定し、「時代と社会を絶えずプロテスト(反抗)した作家、新世紀に輝く世界文学の作家」というとらえ方を可能としました。

 著者は、新資料から芥川龍之介は時代の証言者、時代を拓く人であったと証明してみせます。

 芥川龍之介は1921年、大阪毎日新聞社の海外特派員として中国視察旅行に出かけます。

 芥川は、蘇州の天平山白雲寺の落書きに驚き、それをメモして『支那游記』にさりげなく取り入れました。

 そのメモとは「諸君爾なんじ快活の時に在り、三七二十一条を忘了ぼうりょうすべからず 犬と日奴にちど壁に題することを得ず」でした。

 日本が中国に不当な要求を押しつけた二十一カ条が中国人の誇りを傷つけたのです。芥川はそこに中国人の帝国主義日本への抵抗を読み取ったのです。

 また関東大震災の時のことを書いた「或自警団員の言葉」には、朝鮮人を虐殺したことに対して「況いわんや殺戮を喜ぶなどは」と自警団への痛烈な批判をしているのです。

 著者の研究は、過去の否定的芥川論を乗り越え、芥川の新しい積極的な姿を現代によみがえらせたのです。

 失恋体験と結びついているという「羅生門」について、「反逆の論理」としての新解釈、恒藤恭、矢内原忠雄、成瀬正一といった芥川の「知られざる仲間の記録」を通じての芥川の真実の姿に迫る研究など、読み応えがあります。

 改めて芥川作品を読みたくなりました。

(柏木新・話芸史研究家)

(東京民報2022年5月22日号より)

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