
東名高速道路と関越自動車道を巨大地下トンネルでつなぐ東京外かく環状自動車道(東京外環)工事で起きた、調布市内での地表陥没事故(2020年10月)から約2年が経過しようとしています。事故を起こした施工者のNEXCO東日本は、地盤補修工事の説明に特化した個別対応を行う説明会(オープンハウス)を実施しました。
メディアも規制
オープンハウスは11、12日の両日に実施。あらかじめ案内が渡された限られた住民が対象とされ、メディアの取材も規制しました。外環被害住民連絡会・調布は11日午後に記者会見し、「今後の対応などについて話し合いに応じるとした約束が守られない」と訴えました。
オープンハウスでは、地盤補修工事のために建物の除却が必要な15軒のうち、約半数が移転に応じたことのほか、工期との関係で年内に家屋解体工事に着工することなどが明らかになりました。住民からは「歯抜けの空き地がつくられてコミュニティが断絶させられるなど防犯上問題」という声や、地盤補修工事は公共事業ではないために税制の優遇措置の対象外であることなどから「不安でたまらない」との住民の声が続いています。
騒音や粉じんも
NEXCO東日本は今回の地盤改良工事で用いる「高圧噴射攪拌工法」は「多くの場所で実績がある」と説明しながらも、資料に記載のある施工例においては小規模のものが示されており、今回の幅16㍍延長220㍍ほどの大規模工事の例は提示していません。
また、幅員3~4メートルの生活道路に中型車両(4トン車)が1時間あたり30~40台も通過するなどの説明があり、住民の不安はさらに増しています。当該地域にはプラントを設置し、高さ8メートル(3階建ての建物程度)のセメントサイロや圧送ポンプなどもあわせて置かれます。この地域は第一種低層住居専用地域で高さ制限の他、事務所や店舗などの建設も制限されており、本来はプラントの設置はできません。
しかし、NEXCO東日本は「臨時的なもので固定ではない」として設置可能との見解を示しています。工期はおおよそ2年としているものの、これまでの本工事で工期延長を繰り返していることから「信用できない」との声もでています。
さらに工事に際する騒音や振動だけでなく、粉じんなど新たな公害の問題が発生する可能性もあります。第一種低層住居専用地域で違法操業を続ける足立区の違法セメントプラントの例では、車両による交通事故と騒音・振動の他、粉じん問題などが収まる気配がなく、周辺住民が移転運動を進め、行政指導も行なわれています。施工者である国土交通省、NEXCO東日本に住民から「工事ありきの説明以前に話し合いに応じて欲しい」との声が上がっています。
東京民報2022年9月25日号より