来年10月の導入まで1年を切ったインボイス(適格請求書)制度に反対する声優やアニメ、演劇、漫画業界の各有志団体が16日、都内で合同記者会見を開き、インボイス制度と収入に関する実態調査を発表しました。前日には、日本俳優連合(西田敏行理事長)が制度施行の中止を求める声明を公表。制度が周知されるにつれ、抗議の声が大きくなっています。
各団体が実施したアンケートによると、制度導入で「廃業する可能性がある」「廃業することを決めている」と回答したのは、声優27%(回答数671人)、アニメ業界関係者25%(同1132人)、演劇業界19.6%(同567人)、漫画業界21.2%(同1275人)と、多くの人が廃業を視野に入れている実態が可視化されました。
「インボイス制度を考える演劇人の会」代表世話人で劇作家、演出家、俳優の丸尾聡氏は、コロナ禍以降に公演などの中止や延期を9割以上が経験し、約4割の演劇団体が300万円以上の負債を抱えていると説明。ここにインボイス制度の負担がのしかかると、「日本の未来において文化・芸術の先細りは明らか」と声を強めました。
「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」代表で漫画家の由高れおん氏は、「アシスタント業の問題は深刻」と強調。アシスタントの約6割は年収200万円未満であり、「漫画家側はアシスタントに課税できず、アシスタント側は先生に免税を迫れない」と指摘。「一部の大手出版社や有名作家の作品以外は死滅するのでは」と、涙をこらえながら話しました。
「アニメ業界の未来を考える会」世話人で、株式会社スカイフォール代表取締役の植田益朗氏は、「43年間アニメ業界に携わってきて、インボイスほど危機感を抱いたことはない」と憤慨。インボイス制度を憂慮する声優で立ち上げた「VOICTION」共同代表で声優の岡本麻弥氏は、長年にわたる不景気とコロナ禍で「ただでさえ虫の息のところ、とどめの一撃になる」と訴えました。
未来の才能を守って 超党派議連インボイスで聞き取り
来年10月から施行予定のインボイス(適格請求書)制度に反対するエンターテインメント業界の4団体は16日の会見後、同日設立されたインボイス制度の問題を検討する超党派議員連盟による聞き取りに加わり、財務省と国税庁の担当者も同席するなか、当事者の声を届けました。