YKK露骨に降格・退職迫る 内部告発を契機にパワハラ〈2022年12月4日号〉
- 2022/12/5
- 労働・市民
ファスナーの世界シェア第1位(シェア率45%)を誇るYKK株式会社(本社・千代田区)で働くロシア国籍の男性労働者が、内部告発を契機にパワハラに遭い著しく不利益を被っているとして改善を求めている問題で、争いは法廷に持ち込まれています。世界的に拠点を設けている日本を代表する大企業で起きているレイシャルハラスメント(外国人への嫌がらせ)は、「国際的にも恥ずべきこと」だと支援者は憤りを隠しません。
外国人労働者が裁判
男性労働者は自国大学院で経済学博士号を取得後、日本でも博士号を得て、2011年11月にグループ企業のYKK AP株式会社に労働期間の定めなく入社。外国市場関係の業務に従事していた2013年4月、輸出時の納税や展示会費用に不正と考えられる点を見つけたとして会社に報告しました。男性は「間違いを見つけたら報告するのは当然です。私のミスにもなりかねない」と当時を振り返ります。
半年後、上司に「お前はクビにするよ。YKKで仕事がなくなる」と言われると同時に、同僚の態度が変化して疎外感を感じたことから会社の相談室に相談。ところが相談の内容が同僚に知られ、事態が悪化したといいます。さらに男性はウラジオストクへの出向を打診され希望していたのにも関わらず、2014年4月、黒部事業所(富山県)への製造研修(新入社員研修)の内示を受けます。
黒部では新入社員と一緒に製造現場で肉体労働に従事。体格の良い男性は日本人の体格に合わせた作業台での作業が肉体に負担となり、けがをしますが、比較的負担の軽い作業に変更されるだけでした。10月の研修終了後には事務職の復帰が提示されず、11月には年末に自己都合で退職願にサインをするよう退職勧奨を受けました。
翌2015年3月、人事部長より「YKK APに仕事はない。(関連会社の)YKKへの異動か転職しては」と告げられ、YKKに移動し3月末から古御堂工場(富山県)での異例の新入社員研修を再び受けました。
「アホ、クビに」
労働条件が引き継がれてYKKに転籍になった男性は、ロシア市場担当などの業務で資料作成などが命じられたといいます。そして6月に行われた男性の歓迎会の酒席で、同社コンプライアンス担当でもある部長が「お前はアホ」「お前をクビにする」と言い出し、翌日から冷たい態度になり、男性の担当業務の発表を他者に行わせたのをはじめ、ロシア市場関連の会議に出席させないなど冷遇。ロシアYKKの従業員との面会もさせず、上司や同僚との情報共有もされなくなり業務に支障をきたすほどになりました。
たまたま顔を合わせた同社の会長(当時)が男性に声をかけた際、男性が窮状を訴えると、改善どころか上司の嫌がらせは以前にも増して過酷なものになりました。